「今の家賃で家が買えるか」すぐにわかる考え方 返済可能額は老後の生活費から目安を立てる
高橋さんが受け取る年金の見込み額は年間約188万円です。手取り160万円ほどとすると、生活費は月13万円。退職金は800万円ほどの見込みで、現在の貯蓄額200万円と合わせると1000万円。65歳以降30年間生きるとして、年間に取り崩せる額は33万円です。月額2万8000円ですので、老後の生活費は約15万8000円となります。
一方で、住宅にかかる費用は、ローン完済まで月額約11万9000円で、差し引くと3万9000円。生活が成り立たない可能性が大きいでしょう。変動金利で計算しているため、将来金利上昇によって返済額が増えることもありえます。
ではどうすればいいのか。解決策として考えられるのは「働く期間を延ばし、現役時代にローンを終わらせる」ことでしょう。
高橋さんの今後の平均手取り年収は約428万円です。70歳まで働くことを前提に、借入期間を30年から20年に短縮して計算してみます。
毎月の返済額は約11万5000円です。住宅関係費用は手取り年収の約4割で、差し引くと残りの生活費は20万3000円。頑張れば貯蓄もできそうです。借入期間を10年短くすると毎月の支払額は増えますが、利息を約85万円も減らすことができます。
「年金繰り下げ」と「住宅ローン控除」の威力
長く働くことで老後生活費を増やすことができますし、適用事業所で働けば、70歳未満の者は厚生年金の被保険者になるので、働いた分、老齢厚生年金額も増えます。また、繰り下げ受給をすると、年金額は月に0.7%増額します(在職老齢年金制度で停止されている部分は繰り下げできません)。
高橋さんが70歳まで繰り下げた場合は年額約267万円になり、手取りを約215万円として月額17万9000円となります。年間取り崩し可能額を33万円のままとしても、月の生活費は20万7000円です。住宅費用を引いた16万8000円が自由に使える金額です。
ただし、このシミュレーションは変動金利かつ健康で働き続けられることが前提です。もっと手堅く考えるには、物件価格を下げて全期間固定金利で試算することです。
住宅ローン控除を使える場合は、還付された税金を貯めておいて、必ず繰り上げ返済をすると決めるとよいでしょう。住宅ローン控除は、ローンで住宅を取得したり改築したりした場合に、年末ローン残高の1%を所得税額から差し引く仕組みで、原則10年間控除を受けられます。
2020年末までに入居する場合は特例として13年間控除ができることになっていましたが(11~13年目は「ローン残高の1%分」と「建物価格×2%÷3」のいずれか低い金額を控除する)、2021年度税制改正で、特例期間を2022年末まで延長することになります。また、減税の対象物件の床面積が「50平方メートル以上」から「40平方メートル以上」に変わります(所得制限あり)。
高橋さんの場合は、面積要件に該当しないため、住宅ローン減税は受けられません。物件を見直すことも検討するとよいかもしれません。
東京23区の新築マンションの平均価格は、2013年が約5900万円、2020年は約7800万円と1.3倍になっています。2021年も価格上昇は継続するとみられています(不動産経済研究所データより)。購入時期の検討もお勧めしたいです。20年30年と続く支払いです。慎重に考えましょう。
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