この局面の濃厚者接触者探しが極めて不毛な訳 感染研がこだわるクラスター対策、今はムダだ

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新型コロナウイルスは無症状感染者が多く、PCR検査能力が限定的だったこともあり、調査対象が絞られて、とても「積極的」とはいえない中途半端な調査だった。その結果、ウイルスを取り逃がし、流行は2波、3波と、大きくなりながら続いている。

この濃厚接触者について、実施要領には「必要な感染予防策なしで患者と15分以上の接触があった者」と書かれている。ある保健所職員によると、感染予防策は一般人の場合、「マスク」だ。距離の目安は1メートルとされている。マスク生活が当たり前になったいま、マスクを外して1メートルの距離で人と接するのは、会食の時や家庭が多くなる。

積極的疫学調査の予算を離さない感染研

この職員は、感染ルートで、経路不明に次いで家庭や会食の場が多くなるのは当然だと話す。こうした調査結果を根拠にして飲食店に厳しい対策がとられている。食事時に感染しやすいことは否定しないが、果たして、そこまでマスクに信頼を置いた政策を続けてもよいのだろうか。

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ある厚生労働省官僚は「公的PCR検査は積極的疫学調査の予算からお金が出ています。感染研はこれを握って離さない。新型コロナは無症状感染者が多いので、症状がある人が起点になるクラスター対策では制圧できません。中国をはじめ感染を抑え込んだ国は大規模なスクリーニング検査で無症状者をみつけて隔離しています。積極的疫学調査が続く限り、日本は流行と緊急事態宣言を繰り返して疲弊していくでしょう」と指摘している。

松浦 新 朝日新聞記者

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まつうら しん / Shin Matsuura

1962年愛知県生まれ。東北大学卒業後、NHKに入局。1989年朝日新聞入社。東京本社経済部、週刊朝日編集部、特別報道部、経済部などを経て、2017年4月からさいたま総局。共著に『ルポ 税金地獄』『ルポ 老人地獄』(ともに文春新書)、『電気料金はなぜ上がるのか』(岩波新書)、『プロメテウスの罠』(学研パブリッシング)ほか。

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