道は険しい「新ねじれ」狙いの与謝野戦略

道は険しい「新ねじれ」狙いの与謝野戦略

塩田潮

 「離党」を予告していた与謝野元財務相が行動を起こした。無所属の平沼元経産相らと新党を結成する方針である。
 支持率低落で政府・与党側が大迷走なのに、自民党も低迷中という現状に危機感を募らせ、民主党批判層の受け皿となる「第3極」を目指すという。

 狙いは理解できるが、疑問も多い。「第3極」にはそれなりの勢力が必要なのに、自民党分裂イメージを恐れたのか、与謝野氏は「自分一人が去る」という形を取った。もともと「国対・議運族」「調整型」「政策通」の与謝野氏は、派閥政治や政局には鈍感で、風雲急を告げる乱世のリーダーには不向きと見られてきたが、その人物が自ら動いた。
 与謝野氏は谷垣総裁に離党を通告する際、「基本政策の転換」を主張したが、与謝野新党の基本政策もはっきりしない。財政健全化論者の与謝野氏は、一方で小泉政権時代は郵政民営化推進派だった。平沼氏とは対極にいた。路線や政策の不一致を放置してただ結集するだけなら、「野合」批判を浴びる。
 もう一つ、参院選後は「反民主党」で自民党との連携も視野に入れているようだが、将来の復縁を想定した離婚なら、偽装離婚と疑われる。

 にもかかわらず、与謝野氏がここで決起したのは、71歳という年齢も影響していると見る。描いているのは、民主、自民の双方の分解による政界再編と新政権という青写真に違いない。それには参院選で与党過半数割れによる「新ねじれ」に持ち込むしかないとの判断だろう。
 いまが勝負時、もう後がないという思いではないか。

 「第3極」戦略、「新ねじれ」作戦が奏功した場合、政治は狙いどおり政界再編と新政権樹立と進むのか。民主党側で分解現象が始まるかどうかがカギとなるが、相手は権力という接着剤を手にしている。与謝野氏を始め、野党側が描くシナリオが奏功する確率は高いとはいえない。国民の爆発的な支持があれば壁は突破できるが、道は険しそうだ。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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