終電繰り上げ、人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない

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ただ、運休や運転区間の短縮によって終電時刻は繰り上がるものの、「運休となった部分も『回送』として電車自体は走る」(同社広報)ケースがあるという。「翌朝の列車を走らせるために(本来の終点に)回送しなければならない」ためだ。

私鉄も同様だ。例えば、首都圏の大手私鉄の中でも終電時刻が比較的遅い西武鉄道は、本来の終電を含め深夜帯の電車を運休する形で対応するが、運休となる列車も「基本的には回送として走る」(西武鉄道広報部)。「要請への対応で急を要するため、やむをえずこのような(回送する)形になった」という。

ほかの鉄道も「すべてではないが、現行ダイヤの一部を回送として運用するものがある」(東京メトロ)、「列車によって異なるがそういった(回送する)場合もある」(京王電鉄)など、客を乗せる営業列車としては運休しても、回送として電車を走らせるケースは少なくない。

作業時間確保には効果なし

鉄道のダイヤは乗務員のシフトや車両の運用などさまざまな要素が複雑に関連しており、ダイヤ改正の準備には長期間を要する。一方、今回の終電繰り上げは緊急事態宣言発令による国や自治体の要請を受けて急きょ実施したため、車両などの運用まで変えるのは難しい。運休による終電時刻の前倒しと「運休列車の回送」は、要請に対応するための苦肉の策といえる。

東京メトロの夜間レール交換作業現場。鉄道各社は保守作業時間の確保などを目的に今春ダイヤ改正で終電を繰り上げるが、今回の終電繰り上げは作業時間の拡大にはつながらない(記者撮影)

鉄道各社が今春のダイヤ改正で実施する予定の終電繰り上げは、夜間の保線作業や工事の時間確保、現場の労働負荷の軽減などが大きな狙いだ。

だが、今回の繰り上げは「要請を受けた急きょの対応なので、そもそもその点は想定していない」(ある大手私鉄)。終電後に回送電車が走るケースもあり、「作業時間を確保するなどの効果はない」と複数の鉄道会社関係者はいう。

さらに、発表から実施までの期間が約1週間と短かったため、利用客への周知も課題となった。各社は駅へのポスター掲示や車内の案内放送などで告知したが、「JRなどエリアの広い鉄道は相当大変では」(大手私鉄の広報担当者)。今回の終電繰り上げは、負荷軽減どころか「苦労はむしろ増えている」と、ある私鉄社員は漏らす。

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