トランプがこうも「キューバ」を痛めつける理由 退任直前にキューバをテロ再び支援国家に指定

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アメリカからキューバへの送金も3カ月ごとに最高1000ドルまでに制限した。アメリカに移民したキューバ人が本国に暮らす家族へ仕送りしていることは少なくなく、これがキューバの歳入の半分近くを占めている。その規模は2008年から2018年までの間に300億ドルに上るままでの高額になっている。

これを制限すれば、キューバの財政が厳しい状況になることは想像にかたくない。さらに、観光業で潤っていた個人事業者を苦しめるべくキューバへのアメリカからの観光を禁止。唯一家族的な理由での訪問に限られるとした。

2つの事件を理由にテロ支援国家に指定

こうしたさまざまな制裁を課したトランプ大統領の大統領就任中に最後に "残っていた"のがキューバをテロ支援国家に再び指定することだった。これはピストルに残っていた最後の弾丸をジョー・バイデン次期大統領に余計な仕事を課すために放ったようなものである。

トランプ大統領は今回、キューバをテロ支援国家に再指定するのに当たり、次の2つの事件でキューバに逃亡した者のアメリカへの送還をキューバ政府が受け入れないからだとした。 筆者はこの2つの事件についてマイアミの電子紙『パナム・ポスト』(1月14日付)とスペイン・バレンシアの電子紙『サイバーキューバ』(1月12日付)とした。

1つは、2019年1月17日にコロンビアの首都ボゴタで起きた事件である。警察士官学校の生徒22人が死亡し、負傷者も68人というテロ事件で、犯行は民族解放軍(ELN)によるものであった。

この日、同士官学校の自動車用の通用門から中に入るのに見張りの警官に一時停車させられた車に、番犬が近づいて爆薬物が搭載されているのを感知。その瞬間、運転手はアクセルを強く踏んで暴走し、建物に衝突する寸前に爆発した。この犯行に加わった10人がキューバに逃亡。コロンビアとアメリカの両政府がキューバに彼らの送還を要求しているが、これまでのところ却下されている。

2つ目は、アメリカの黒人解放軍のメンバーだったジョアン・チェシマード氏が、1973年にニュージャージー州で州警官を殺害し、収監先の刑務所から脱獄しキューバに逃亡した事件。彼女および同様に逃亡しているアメリカ人の送還を要求しているがキューバ政府はこれを拒否している。

テロ支援国家に再指定されたことから、武器やそれに関係した物資などのキューバへの輸出ができなくなる。経済的支援も制限され、国際通貨基金(IMF)からも資金を仰ぐことができなくなる。

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