気鋭の東大教授「50歳で女性装」を始めた胸の内 多くの困難に直面しても果敢に戦ってきた

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──ところで、安冨さんといえば女性装のインパクトが強いのですが、馬と女性装は、それぞれ別々に、安冨さんの心に変化をもたらしていったのですか?

安冨:そうですね、まずは馬に乗るようになって、女性装を始めたのはその後です。当時ダイエットに成功したんですが、私は体型的に太ももだけ太くて、男物のズボンだと上半身とのバランスが悪いんです。そのときに女性物のズボンを勧められてはいてみたらピッタリで気持ちよくて。

それに合わせるように女性物のTシャツを着たら、その直後から男性物の服が気持ち悪くなって、触る気にもなれず全部捨ててしまったんです。

──急に触るのも嫌になるというのはご自身でも衝撃だったでしょうね。それまで、自分の男性性に違和感をもっていたことはあるのでしょうか。

「親から受けていた暴力を私も子どもに繰り返していたことに気づきました」(写真提供:安冨歩)

安冨:自分でもよくわかっていなかったけれど、きっとそのときに50年間我慢して男性の服を着ていたということに気づいたんでしょうね。たぶん違和感はあったと思うんですが、でもそれをいっさい認識できてはいなかった。そして、認識した瞬間に元には戻れなくなりました。

最初は女性物の服を着ているだけのつもりだったんですが、それじゃあ、なにか合わないということに気づいて。途中から女性の服が似合うように、徐々に見た目を変化させていったという感じです。

──自分の中で「違うな」というものが芽生えたというよりも、女性装に合わせて外見を変化させていったというわけですね。性の意識として、今はご自分を男性とは思わないのですか?

安冨:到底男性だとは思えないですね、今のところは。ただ、人間は変化するものですから。例えば自分はゲイ、レズビアンだと言っていても、それは単に今まで好きになった人が全員同性でしたと言っているだけのことであって、次にどうなるか誰にも予想がつかないこと。私もこの先どう変化するかはわかりません。

猫みたいに、暇にしていても楽しそうな人がカッコいい

──ではそのような安冨さんにとって今の時代に求められる、カッコいい、理想的な大人というのはどういう人でしょうか。

安冨:20〜30年前には、忙しくワイワイやっている方向の、先頭を走っている人がカッコよく見えたと思います。でも今みたいな行き詰っている状態では、ごまかしてくれるものがなくなりつつある。こんな時代になると、まだ表立っていないかもしれませんが、本当に心の優しい人に、人々が憧れる時代が来るんじゃないかという気がします。

──ここにきて本質と向かい合わなければならなくなった、と。

安冨:はい。このコロナの状況下で、前向きの発展型ストーリーを誰もが信じられなくなった。

だからこそ、今はその人がいるだけで安心するような空間があるとしたら、人々が頼るようになるんじゃないでしょうか。そういうものがカッコいいというならば、それはカッコいいんだと思います。

そうそう。最初に、猫の話をしましたが、その意味では、猫みたいに、暇でじっとしていても楽しそうな人、をカッコいいと思うのではないかな(笑)。

──なるほど(笑)。

安冨:もう1つ挙げるなら「子ども」という存在を守れる大人でしょうか。守ろうとする人はたくさんいるんですが、実際に守れる人は少ない。ちゃんと子どもとコミュニケーションが取れて、喜んでもらって、しかもなめられないようにできる人が、本当にカッコいい人だと思います。

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