「ロス再封鎖」に感じる前回とは違う異様な空気 高級住宅街でデモ、公園に増えるテントの数…

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外出禁止令の第一弾が発令された昨年春、ロス氏はロサンゼルス市長に手紙を書き「ターゲットやウォルマートなどの大規模店が営業を許されているのに、なぜ小規模店舗は店内にお客を入れての営業を厳しく規制されるのか」と質問していた。

現在、キットソンのホームページを開くと、最初に出てくるのが「マスク」の商品の写真だ。つまり、小さな店でも、大規模チェーン店と同じように「コロナ禍の生活必需品」を売っているのだと強調しているわけだ。

ちなみに現在のロックダウンで、カリフォルニア州は、スーパーに対しては、通常の35%の数の客を入れて営業することを許可し、キットソンなどの小規模店に対しては通常の20%の数の客を入れて営業することを許可している。ただし、ヘアサロンなど多くの小規模店は、通常の20%の客数では家賃が払えず、やむなく閉店する場合も少なくない。

ホームレスが暮らすテントがあちこちに

客数規制の背景にあるのが、ロサンゼルス郡でのコロナの感染拡大だ。2020年の12月以降、ロサンゼルス郡のコロナ感染者が1日当たり1万人のペースを超えるようになり、ついに12月18日にはロサンゼルス市を含む南カリフォルニア地域の病院の集中治療室(ICU)ベッドの空きが「ゼロ」になったと発表された。つまり、コロナ以外の交通事故などで病院に収容されても重症者のためのベッドの空きがない、という状態に達したわけだ。

クリスマスイブに、サンタモニカ市のセント・ジョン病院の救急患者搬入の入り口に行ってみた。するとそこにはすでに白い大きなテントが貼られていた。

サンタモニカ市内の病院の救急患者出入り口には、白いテントが設置された(写真:筆者撮影)

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)付属病院の救急入り口に行ってみると、青いガウン姿の医療従事者がピザの箱を抱えて出てきた。彼は歩きながら箱からそのままピザをつかんで食べ、すぐに急いで建物内に戻って行った。

冷たい雨が降り出したクリスマスイブの夕方、UCLA病院の横に置かれたゴミ箱をあさる多くのホームレスの人々がいた。さらにUCLAキャンパスの近くにあるウェストウッド公園に行ってみると、十数個のテントがあちこちに張られており、ホームレスの人々が住んでいるのが見える。雨をしのぐテントがなく、マットレスを置いてその上にそのまま寝ている人もいた。

UCLAキャンパスの近くの公園には、複数のホームレス・テントが張られていた(写真:筆者撮影)

この公園と同じブロックには「電気自動車の充電ができる駐車場つき。ウルトラ・ラグジュアリー・アパートメント」という看板がある高級アパートが建っている。

昨年、ロサンゼルス郡は1万5000人のホームレスをホテルに収容すると公約したが、その約束はいまだ守られていない。ちなみに2019年度の同郡のホームレス人口統計は6万6000人。2020年度はコロナ禍でボランティアがホームレス人口を数えることが危険なため、統計を取るのを郡が諦めたことを最近発表したばかりだ。

ロサンゼルスの隣のヴェニス地域にあるゴルフ場では、柵に囲まれたゴルフ場の芝生をぐるっと縁取るような形で、数百以上のテントが張られており、そこにホームレスの人たちが住んでいる。ロックダウン中のいま、テントの数は、日々増えている。

また、コロナ禍で治安もかなり悪化している。ロサンゼルス市警察が発表した2020年のLA市の犯罪統計によると、特に夏以降、銃による殺人事件数が跳ね上がり、結果、前年比36%増の336人が市内で殺害された。これは過去10年間を通しても最悪の数字だ。

長野 美穂 ジャーナリスト

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ながの みほ / Miho Nagano

米インベスターズ・ビジネス・デイリー紙記者として5年間勤務し、自動車、バイオテクノロジー、製薬業界などを担当した後に独立。ミシガン州の地元新聞社に勤務した経験もある。

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