GAFAが突然やたら訴えられるようになった事情 規制に火をつけた元インサイダーの正体

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連邦規制当局と各州の司法長官らは、とどまるところを知らない大手テック企業の独占状態に不安を募らせ、懸念も表明していたが、問題を法廷に持ち込むのには難儀していた。テック企業、およびテック業界の複雑性ゆえだ。これらの企業が提供するサービスの多くが無料だったため、消費者に害を与えていると主張することも難しかった。

過去20年間にわたり巨大テック企業がさらに強大となり、次々と新しいビジネスに手を伸ばし、買収によって競合他社をのみ込んでいく中、アメリカの規制当局は反トラスト法をなかなか適用しようとしてこなかった。ところがここ何カ月かで、テック企業に対する反トラスト法訴訟が相次ぐようになっている(本稿執筆時点でグーグルに対しては3件、フェイスブックに対しては2件の訴訟が起こされている)。

GAFAを追及する当局のブレーンに

巨大テック企業の圧倒的な影響力に対する懸念が強まったためだが、法的な論拠固めにおいてはスリニバサンの論文が大きな影響を与えたのは明らかだ。

例えば、ライバル企業を買収し、違法に競争を握りつぶしてきたとしてフェイスブックを多数の州と共同で2020年12月に提訴したニューヨーク州の司法長官レティシア・ジェームズはこう述べている。消費者はプライバシーの保護が犠牲になるという形で代償を支払わされている――。

これはまさに、スリニバサンの論文「フェイスブックに対する反トラスト法訴訟」の核心を成す議論である。

テキサス州など10州が反トラスト法違反で2020年12月中旬にグーグルを提訴したときも、訴状にはスリニバサンがスタンフォード大学の法学雑誌で発表した論文「グーグルが広告市場を支配している理由」で指摘したのと同じ利益相反が列挙されていた。

訴えの理由はこうだ。グーグルは広告に関わる全プロセスを支配し、これを自社のサービスに有利となるように利用し、「ピッチャーとバッター、審判の役割をすべて同時に」担っていた――。

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