高級スーパー成城石井を誰が射止めるのか ファンド傘下の食品スーパーに小売り各社が熱視線

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一方、買収のネックとなるのが、その金額だろう。丸の内キャピタルの前に成城石井の経営権を握ったのは、焼き肉店の「牛角」などを展開するレインズインターナショナル(当時)だった。

同社が成城石井の商品開発力の活用やグループの仕入れ規模拡大などを狙い、経営権を取得したのは04年。発行済み株式の約67%を65億円で取得した。つまり、当時の企業価値は約100億円。その後、丸の内キャピタルが買収を発表したのは11年。買収価額は非公表だが、400億円ともいわれる。

買収額は最低400億円?

仮に、ファンドの投じた金額がこの水準だとすれば、当然、丸の内キャピタルの売却意向額は400億円以上になる。13年末の成城石井の純資産額は約190億円。単純計算すると、400億円で買収できたとしても、200億円強もののれん代が生じる。決して安い買い物とはいえない。

成城石井は近年、毎期10店舗前後の出店を進め、高級スーパーとしては110店(13年末)と最大級の店舗数を誇る。こうした動きに対し、業界関係者からは「高級スーパーとしての希少価値が薄れ始めている」「輸入した加工食品の強さは認めざるをえない。だが、多店舗化で、今後は総菜などの店内加工の手薄さが目立ってくるのではないか」といった声も聞かれる。

各社が展開する業態と成城石井との親和性、そして関係者や各社首脳の反応を総括すると、有力視されるのがローソンで、それに続くのが三越伊勢丹HD。大穴でH2O、イオンといった構図だろう。最終的に成城石井を掌中に収める企業はどこか。そして同社は今後も快進撃を続けられるのか。業界の誰もがかたずをのんで見守っている。

 

週刊東洋経済2014年6月14日号〈6月9日発売〉掲載の「核心リポート02」を転載)

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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