「炎と猫と資本主義」に見る「2021年欲望の行方」

異色TV番組の背景「資本のない資本主義」の時代

そして、もう1つ特筆すべき点があるとすれば、「主役は炎とあなたです」というコピーを番組HPにも沿わせているように、ゲストの皆さんの話から刺激を受けた視聴者の方々も、自由に想像力の世界に遊んでほしいという思いがそこにはある。

話の行間から想起された思いを、それぞれが炎に投影させる。もちろん番組というものはどなたにもどのようにでも自由に見ていただくもの、すべての企画が「主役はあなた」なのだが、そのことをあらためてど真ん中に考えた企画だともいえるのかもしれない。

こんな番組を毎週火曜の夜にお送りしているわけだが、別に奇をてらって考えたわけではない。企画したのは1年以上前のこと、さらに言えば30年以上前と言ったら呆れられるだろうか。

さまざまなジャンルの3人のゲストたちがタキ火を囲み、言葉を交わす「魂のタキ火」は、NHKのBSプレミアムで毎週火曜23:15~放送中(写真:NHK)

駆け出しのディレクターだった頃、ひたすら滝や炎をカメラが捉える番組は……などと口にして、プロデューサーたちに「テーマは何か? それで何を狙うのか?」と問い詰められ、言葉に窮した記憶がある。

ゆらめく炎、流れ落ちる滝、寄せては返す波、木々を揺らす風……、 そうした揺らぎを捉えた映像は今でこそ、このYouTube時代、「癒やし」の名の下に広がりを見せ珍しくなくなり、「コンテンツ」として立派に成立する時代となった。 皮肉なことにこのコロナによる不透明な状況の中、「安らぎ、静かな落ち着けるひととき」とご好評をいただいている。

なぜ今、火、炎なのか? つかまえられない揺らぎを宿し、すべてを燃やし尽くす炎は、原初の存在、文明の始まりでもある。そして「町の火を消してはならない」などと表現されるように、小さくともその存在をなくすべきではないものにたとえられることがある。

怖くて偉大で大切さの象徴たる火は、私たちの本能を刺激する。そしてそれは、実は現代社会の大いなる欠落の象徴でもあるのではないだろうか?

デジタルテクノロジーが招く無形資産の時代

現代の社会をあらためてフラットに眺めたとき、デジタルテクノロジーの進化、デジタル技術がもたらした変貌ぶりは見落とすわけにはいかないだろう。この四半世紀の間、IT、ビッグデータ、AI、そして今DXと語られる資本主義の「最前線」は、その多くをデジタル技術に負い、人々のコミュニケーション様式も、ビジネスの作法も、生活スタイルも大きく変わった。

人々の心、精神、思考などのかけがえのない人間らしさとされてきたものも、いつの間にか易々と数量化、データ化され、アルゴリズムで表現できるというストーリーがまことしやかに語られるようになった。

次ページ人間がシステムに合わせている倒錯的な状況
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • おとなたちには、わからない
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • コロナ後を生き抜く
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ついに上場廃止、大塚家具の末路
ついに上場廃止、大塚家具の末路
日本初、「工場を持たない」EVメーカー誕生の衝撃
日本初、「工場を持たない」EVメーカー誕生の衝撃
日本人に多い「腸を汚すフルーツの食べ方」4大NG
日本人に多い「腸を汚すフルーツの食べ方」4大NG
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
2050年の中国<br>世界の覇者か、落日の老大国か

米国と並ぶ超大国を目指す中国。しかし中国の少子高齢化はこれまでの想定を超える速さで進行しています。日本は激変する超大国とどう付き合うべきか。エマニュエル・トッド、ジャック・アタリ、大前研一ら世界の賢人10人が中国の将来を大胆予測。

東洋経済education×ICT