白血病のJリーガー「病名公表」するまでの苦悩 酒井高徳選手が見舞い、南野選手も心配のメール

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外出当日、片渕さんだけでなく、中学時代からお世話になってきた若杉透さんも加わって、3人で出かけることになった。

僕にとっては、昔からお世話になり、僕のサッカー人生に大きな影響を与えた2人。「何が食べたい?」と2人に聞かれ、「もう生ものが食べられなくなるかもしれないので、お寿司が食べたいです」とリクエストした。

若杉さんの家の近くにあるお寿司屋さんで、お寿司を食べながらいろいろな会話を交わした。サッカーの話から昔話、何気ない会話に本当に心が落ち着いた。

「明日から俺、頑張りますよ。絶対に治して、もう一度ピッチに立ちます」

若杉さんとはそう言って別れると、片渕さんが僕を病院まで送ってくれた。この車内で僕は片渕さんとずっと話をしていた。

覚悟しても「頑張る」と言っても…

どんな内容だったかは、すべては覚えていない。でも、はっきりと言えるのは、「沈黙するのが怖かった」ということだ。会話が途切れると、車内が静かになる。その瞬間に僕はこれからのことを考えてしまい、心が締めつけられた。覚悟は決まったはずなのに、「頑張る」って言っているのに、ふとした瞬間に心をもっていかれてしまう、弱い自分がそこにいた。

病院が近づくにつれ、お互い言葉が少なくなっていった。あれほど恐れていた静まり返った車内。僕は病院に戻りたくない気持ちで言葉が出てこなくなっていた。一方、片渕さんもそんな僕にかける言葉が見つからないように感じた。

静かな車内から病院が見えてきた。病院のロータリーに着いたとき、正直、車から降りるのが嫌だった。

「またここから自由がなくなっていくのか……」

でも、ずっとここにいるわけにはいかない。重い足取りを必死で前に出す感じで、僕は車から降りた。

「今日は本当にありがとうございました」

片渕さんと握手を交わして見送ってから、僕はふと夜空を見上げた。

いつもと変わらない空なのに、何かもの寂しさを感じた。

「明日から俺は、こうして外で夜空を見上げることもできなくなるんだな……」

自然と涙があふれてきた。僕は涙を拭って、病室に戻った──。

5月20日、再び片渕さんが僕の病室にお見舞いに来てくれた。

「史哉、実はもう1人連れてきているんだ」

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