「エキナカ自販機で缶コーヒーがタダ?!」が示す可能性《それゆけ!カナモリさん》

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■新しい自販機の可能性

 その名の通り、mediacureはデジタルサイネージも含めて全体として交通広告媒体であることは間違いない。無料配布とサイネージでの広告放映に関してはメーカーから広告料を得て、それで本来の飲料販売機会の消失を補填しているという。しかし、本質的にはJR東WBの狙いは「自販機とデジタルサイネージの親和性を検証し、より双方向な新たな自販機のカタチ、可能性を追求すること」(同社広報)にあるという。

このあたりは同社の強みを背景としている。現在、自販機のほとんどは飲料メーカーが自社の製品販路として展開している状態だ。各メーカーの商品が混載されているように見える自販機も、運営会社に飲料メーカーの資本が入っているため、実際には取扱商品にメーカー系列の偏りがある。全く飲料メーカーの資本が入っておらず、「消費者が買いたいモノを並べる」というスタンスで展開しているのはJR東WBのみなのだ。

同社は「広告として配布や放映をするのではなく、あくまで小売業として、消費者が購入したいものを優先する」という。そして「メディア事業は副業であり、あくまでも飲料及び飲料自販機を通じ、先進的小売業を目指したいと考えている」と言い切っている。

つまり、「駅を利用するターゲット層に合わせた品揃えが可能」という強みをいかし、サイネージスペースは、広告収入を得るためではなく、あくまで自販機で商品を買ってもらうための販促に利用する狙いだろう。

時間帯や利用する場所に合わせて、ターゲットに合わせた飲料の広告を打つ。小売店のPOPやスーパーマーケットに置かれたサイネージと同じように、購買意欲をあおる。スーパーマーケットのサイネージではすでに効果が出ている例も多数報道されているから、今回の先進的自販機やサンプリングも十分に可能性があるといえるだろう。

 

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