JR西「銀河」"昼の長距離特急"で見せた新たな顔 車窓の景色が移り変わり夜行にない魅力が満載

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九州では10月16日から特急列車「36ぷらす3」が運行開始している。車内は豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」に匹敵するゴージャスな内装に彩られているが、寝台列車の機能はない。宿泊は沿線のホテルや旅館を利用するという趣向だ。

5日間かけて九州を周遊するが、1日単位の利用も可能。ランチがつく「ランチプラン(個室)」の場合、博多ー鹿児島中央間の料金は2万0500円。食事が提供されない「グリーン席プラン」なら1万6860円とさらに割安だ。

36ぷらす3にはビュッフェがあり、ドリンク類のほかカレーライスやうどんが買える。列車内で食べる温かい料理の味は格別だ。客室乗務員のサービスも隅々まで行き届いており、ななつ星の雰囲気をリーズナブルに味わいたい人にはおすすめだ。

JR九州のななつ星、JR西日本の銀河に加え、JR東日本も豪華寝台列車「TRAIN SUITE(トランスイート)四季島」を運行している。そして、JR九州が36ぷらす3、JR西日本が銀河という豪華寝台列車のカジュアル版ともいえる列車の運行を始めたことで、残るJR東日本の動向も注目される。ひょっとしたら東日本エリアにもこうした列車が登場するかもしれない。

長距離特急ならではの魅力

銀河のデザインを担当した川西康之氏は、「車窓から見える景色を存分に楽しんでほしい」と言う。夜行列車と昼行列車の最大の違いは、まさに外の景色にある。話題性抜群の銀河や36ぷらす3に乗った人たちが車窓の魅力の虜になったら、ぜひ全国を走る長距離特急列車に乗ってみてほしい。北海道には「おおぞら」(札幌―釧路間)、「宗谷」(札幌―稚内間)、「オホーツク」(札幌―網走間)などの長距離列車が走っており、車窓から見える四季折々の景色は格別だ。

東日本エリアでは3月から特急「ひたち」が品川―仙台間で運転を開始した。所要時間は4時間半を超える。東北新幹線なら1時間半程度だが、常磐線をその3倍の時間をかけて走る分、海岸沿いの美しい景色を堪能できる。また、太平洋を一望できる日立駅の駅舎と自由通路は西武の特急列車「ラビュー」をデザインした建築家の妹島和世氏が手掛けたもので、途中下車して見学する価値がある。

観光だけではない。福島県内の帰宅困難区域も通り抜けるため車窓越しに被災地の現状を見ることで、何らかの気づきを得られるはずだ。

ローカル線をのんびりと走る観光列車が全国各地で人気を集めているが、移動を主目的とした特急列車も魅力は満載だ。銀河の昼行運転は長距離特急列車の復活を予感させる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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