テスラの半分しか走れない「ホンダ新EV」の狙い 航続距離よりも都市部での日常使いを優先

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――具体的にどういった点で「街中ベスト」を意識していますか。

小回りのよさについては、最初からトップレベルを目指した。後輪駆動方式を採用するなどして、(ハンドルを目一杯切ったときの小回りの良さを示す)最小回転半径は軽自動車をもしのぐレベルに仕上げた。また電池を車両の底に水平に配置して重心を低くし、凹凸のある道でも走りが安定するように工夫した。日常使いには、乗りやすさや使いやすさが重要になる。そこは特にこだわった点だ。

「ホンダeは新たなEVの提案だ」と語る開発責任者の一瀬智史氏。写真は2020年8月のホンダeの取材会(編集部撮影)

――どんな利用シーンを想定したのですか?

これまでのEVはたくさん距離が走れるガソリン車の置き換えを狙っていると思うが、ホンダeは通勤や買い物など、毎日の生活の中で使ってもらうイメージだ。満充電状態なら、この車で東京から横浜に行って戻ってくる距離の走行は十分にできる。

しかし、もっと遠い場所、長距離の移動になると、充電が必要なシーンも出てくる。したがって、2台目、3台目という位置づけ、いわゆる「セカンドカー」として使ってもらえればと考えている。

航続距離がすべてではない

――航続可能距離が500~600キロメートルのEVも登場する中で、ホンダeは半分程度(国際基準のWLTCモードで283キロメートル)にすぎません。この点はあえて割り切ったのですか?

当社の独自調査によると、欧州では車の走行距離が1日90キロメートル以下の人の割合が90%を占める。だとすると、普段使いの車に何百キロも走れる大量のバッテリー(電池)を積む必要はない。もっと航続距離の長いEVを開発すること自体は難しくないが、それで本当に環境のためになるのかという議論を社内で重ねて、今回の航続距離を設定した。

コンパクトな車で余計な電気を持って走らず、帰宅後に1晩充電して翌朝また乗って出かける。そんな使い方にしたほうが現時点ではバランスがいいのではと考えた。今回、ホンダeに搭載したバッテリーは急速充電なら30分で80%まで充電でき、日々の生活に十分対応できるよう配慮してある。

EVはどうしてもガソリン車と比較されて、航続距離ばかりに注目が集まりがちだ。それはある意味、ガソリン車コンプレックスみたいなもの。ホンダeは、必ずしも大事なのは航続距離だけじゃないですよ、という新しい提案だ。

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