「詐欺やだましの分析」を経済学が苦手な理由 「不道徳な見えざる手」が教える経済学の弱点

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競争市場の成り行きを経済学者たちは本当に見通すことができないのだろうか(写真:kuppa_rock/iStock) 
資本主義は、いいことだけを私たちにもたらすわけではない。資本主義には、詐欺やだましを生んでしまう内在的なメカニズムがある――。
2人のノーベル経済学賞受賞者が、経済学者が言わない本当のことを述べた衝撃の書が『不道徳な見えざる手』だ。本書の内容を抜粋・編集してお届けする。

市場への賞賛が行きすぎないようにしよう

ほとんどの国は自由市場に対する敬意を学び、ほとんどの場合それは適切なことだ。自由市場は高い生活水準をもたらす。経済学により、競争市場が「効率的」だということを学ぶ。というのもかなり緩い仮定のもとでも、均衡ではある人物の厚生の改善は、他人を犠牲にしないとできないことが示されたからだ。

『不道徳な見えざる手』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

要するに、経済学は通常、自由な競争市場が「うまく」機能している状態を記述する――。もっともそこには、「外部性」や「不公平」な所得分配の問題を解決するための介入が必要だが、これは適切な税金や補助金を通じた最小限の介入で実現できる。

私たちは、人々や市場について、それと違った――そしてもっと一般化した――見方をする。その見方は本書で一貫している。私たちは、自由市場の優れた点について経済学の教科書に刃向かうつもりはない。

でも、市場への賞賛が行きすぎないようにしよう。あらゆる適切な前提がすべて本当に整合していれば、市場はかなりうまく(教科書で述べるとおり)機能するかもしれない。

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