大手企業の「東京脱出」がなかなか進まない背景 一方でベンチャーは地方移転の検討増える

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コロナ禍で東京一極集中リスクが改めて焦点となる中で、リスクヘッジを兼ねて本社機能の移転・分散化を考える企業を誘致しようという地方の動きも盛んだ。IT関連企業の間で話題になっているのが、広島県の「企業立地促進助成制度」である。

デジタル系企業などを対象に、本社機能の移転・新設の「短期プロジェクト参加型」と「移転・分散型」の2種類のコースが設定されている。メインの「移転・分散型」は移転に伴う初期費用を最大2億円支援する(研究開発部門を含む場合は3億円)。オフィス改装費用、オフィス機器購入、人材紹介手数料などは50%サポート。県内に移住することになる大企業の代表者には最大1000万円(中小企業は500万円)を提供、住居賃料も50%サポートする。

それだけではない。社員とその家族にも1人当たり200万円提供するというのだ。つまり、会社の移転で家族4人で移住すれば、その一家はなんと800万円ものキャッシュを手にすることができるのである。このほかにも県内の市や町によってはオフィス賃料のサポートもある。至れり尽くせりである。

デジタル系企業を誘致したい広島県

この制度の予算は、広島県が9月の補正予算で組んだもので総額10億円。10月6日から2021年2月28日(予定)までの期間限定だ。この太っ腹の支援策について、広島県商工労働局県内投資促進課に狙いと応募件数などを聞いてみた。

「広島県は自動車、造船などモノづくりが盛んな県ですが、これからのグローバル競争を勝ち抜いていくためにはデジタル系企業を誘致して、製造業と絡めたイノベーションが欠かせないという判断が根底にはあります。

コロナ禍で地方移転への関心が高まる中、ピンチをチャンスに変えようということでこの制度を設けました。これまで短期プロジェクトには60件超、移転・分散型には360件の問い合わせがあり、2社に対し交付が決定しています。最初は小規模で来ていただいて、この地で大きく成長していただければと思います」(県内投資促進課の担当者)

広島県への企業移転は2017年以降、11社、14社、15社と微増中。今年は10月末までで今回の2社を含めて13社となっている。

「企業誘致による税収増や経済効果といった直接効果はもちろんですが、それよりも新たな雇用創出につなげていくことで若者の人口流出や、デジタル分野での人材育成環境の構築につなげていきたいと考えています」(前出の担当者)

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