首都圏の通勤電車に見る「上手な線路の使い方」 限られたインフラで増発や遅延防止の取り組み
目黒線の武蔵小山駅は急行と各駅停車の待ち合わせができる構造の駅で、上り(目黒方面)の場合、通常は急行が3番線、各停は4番線に入線する。先に各停が到着し、後から来る急行に追い抜かれる形だ。
だが、このように発着番線が決まっていると、急行が駅を出た後も各停が発車しなければ次の各停は駅に入れない。ここで遅れが発生すれば、後続の急行も詰まってしまう。
そこで同駅では朝ラッシュ時、急行と各停の発着するホームを固定せずに交互に発着させるようにした。4番線の各停が発車すると同時に3番線に後続の各停を入れ、その後空いた4番線に急行が到着、発車後に次の各停が入線……という形だ。
つまり、急行を3番線に入れるパターンと4番線に入れるパターンを繰り返すことによって、駅手前での列車の渋滞を防止しているわけだ。急行の停車時間も1分以上と余裕ある設定だ。
京王線は本数を増やせるかも?
これを以前からやっているのが京王で、調布駅でこのやり方を採り入れている。同駅の場合は急行と各駅停車だけではなく、特急と急行などの組み合わせでも実践している。
例えば19時53分から10分間の下り線の動きを見てみよう。
同駅の下り線は1番線と2番線の2つだ。まず19時53分、1番線に各停橋本行きが到着し、54分に発車。隣の2番線には55分に急行橋本行きが入線する。56分には1番線に特急京王八王子行きが到着し、58分に出発。20時00分に2番線の急行橋本行きが発車し、その直後の02分には同じ2番線に各停高尾山口行きが入る――といった具合だ。
完全ではないが、かなり「交互」に近い発着パターンだ。これによって、相模原線橋本方面と京王線京王八王子方面という2つの異なる路線、そして複数の種別が入り混じる中、1時間当たり24本(19時台)の列車をさばいている。
この方法を突き詰めれば、本線・待避線ともに先行列車が発車した1分30秒後に後続列車を到着させることができる。急行停車駅をすべて待避線のある駅にしてこの方法を実行すれば、複線の限界である1時間最大30本を突破することも理論上は可能だ。
京王は現在、笹塚―仙川間の高架化事業を進めており、明大前駅と千歳烏山駅は線路を4線に増やす計画だ。これが実現すると笹塚―つつじヶ丘間は急行等の追い抜きがない駅と追い抜きが可能な駅が交互に配置されることになる。そして、急行・準特急の停車駅は、追い抜き可能な駅、または追い抜きが可能になる予定の駅のみだ。
このような設計にすると、複線で走らせられる本数の限界を大幅に引き上げられる可能性がある。停車時間を30秒に固定するなら、理屈のうえでは複線のまま1時間最大40本運転
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