団塊ジュニアの矛盾する消費動向 最後のマス世代が動けば、日本が動く?
例えば、この世代の母親で革張りの手帳を持つ人が多い。子どもやママ友との予定が書きこまれた手帳が、エルメス製という人も。リフィル込みで7万円以上はする高額商品だが、ブランドロゴは控えめで、「やっかみ」の目線を浴びることはない。ファストファッションの着こなしにも同じ論法が流れている。着こなしを褒められ、「実はこれ、ZARAなんですよー」と満を持して繰り出す「ZARA自慢」は象徴事例だ。
抱える大きな自己矛盾
この世代の消費傾向を「モノを買って満足するのではなく、生の体験に関心がある」と見るのは、博報堂・新しい大人文化研究所の阪本節郎さんだ。
仲間とツーリングに出かけられる自転車は好例だろう。自分らしく生きたいと思う半面、孤立することへの不安も強いこの世代にとって、人との関係をつないでくれるし、年齢とともに強まるフィットネスへの高い関心ともつながる。
アラフォーの独身女性向けファッション誌「DRESS」の男性編集長、山本由樹さんは、自分の欲望を全肯定するバブル世代と比べて、「団塊ジュニアは複雑」と話す。
読者の声を聞くためにメールアドレスを公開している。毎日数十通を超えるメールが届くなか、手厳しい声もあったという。
昨年12月号で、「もう女子じゃない! 中年であることを受け入れよう!」という見出しをつけたときは、「傷つきました」という非難が返ってきた。大人の女性として堂々と生きていこう。そんなメッセージを送ったつもりが届かない。誌面でアンチエイジングという言葉を使えば、「その言葉は嫌いです」と返される。その時は、「エステでアンチエイジングに熱を上げている彼女たちを、どう捉えたらいいのか」と、腑に落ちなかったという。
山本さんはこう言う。
「この世代は、大きな自己矛盾を抱えているのではないか」
ある種の二面性をもった世代をつかまえるために肝要なのは、「理想」と「共感」のバランスではないか。
今年6月号には、その仕掛けが見てとれる。表紙モデルも務める女優・米倉涼子さんのファッションロケを、下町の銭湯や居酒屋で行っているのだ。米倉さんという「理想」を、銭湯や居酒屋で撮ることで「私たちと同じ場所に立っている」。そう感じてもらう仕掛けだ。