アリコジャパンの前途、AIGがついに売却
しかし、2008年に親会社のAIGが米政府に実質国有化されたことから、顧客離れが進行した。さらに昨年7月、約3万4000件の顧客カード情報流出が発覚。一部が不正使用される事態となり、ブランドイメージが大きく傷ついた。アリコジャパンにとって、AIGショックと合わせ2度の大ダメージであり、09年度第3四半期までの保険料等収入は前年同期比で約13%も落ち込んだ。
第3四半期のみの個人新規契約金額を見ると、前年同期比2ケタ増(個人保険の年換算保険料で16%増)だが、これはAIGショックの方が大きかった証しでもある。信用力の回復を図るうえで、米最大手メットライフ傘下に入ることの効用は大きい。
再攻勢への転機
メットライフ自身はこれまで三井住友海上グループと合弁会社を設立し、銀行窓販向けを主に年金保険事業を展開してきたが、日本における知名度はいま一つ。しかし、アリコ買収で年金保険だけでなく、死亡保障から医療分野まで商品ラインナップをそろえ、アリコジャパンの販売チャネルを活用できる国内で一気に事業を広げることになる。
また、国際戦略が加速するメリットも大きい。メットライフの全世界の拠点網は、従来の17カ国から60カ国へ拡大する。「(買収金額は)日本円で1兆5000億円くらいが妥当といわれていた。決して高い買い物ではない」(業界関係者)と言われる。
今後の焦点の一つは、三井住友海上との合弁の年金保険事業の扱いだ。買収手続きが完了する今年末までは大きな動きはなさそうだが、アリコの年金保険事業と重複しており、来年以降は業務分野の調整が不可欠となる。
「飽和した国内市場でアリコジャパンが元気を取り戻せば、競争が激化しそうだ」と警戒を示す国内中堅生保もある。2度のダメージを耐えしのぎ、再攻勢への転機が到来したことは間違いない。
(木村秀哉 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年3月20日号)
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