著作権「補償金」と学者の不適切な関係

CRICは59年に文化庁の肝いりで著作権資料研究所として設立されたが、補償金制度とともに事業が急拡大。組織膨張で日本音楽著作権協会(JASRAC)からの出向組も少なくない。CRICは共通目的基金からの受託事業収入の2割を一般管理費に使えるため、CRIC職員の給料やオフィス賃借料(西新宿の東京オペラシティタワーに入居)などはここから賄われている部分が大きい。補償金管理団体関係者は「CRICの共通目的基金への依存は大きい」と話す。

 学者3人のうち2人は、このCRIC内にある著作権研究所の運営委員も務める。2人にはCRICから給料手当や旅費交通費などが支払われているが、共通目的基金が同研究所の事業運営の原資の多くを占める。また、残りの1人もCRICの一部受託事業(06年度)の委員として給料手当を受け取っていた。

 「税制上、年に数回払うと給料扱いとなるため、そのような言葉を使うが、実際は委員会の出席手当程度の金額にすぎない」(北村均CRIC事務局次長)とCRICは話す。実際には出席1回当たり2万~3万円とみられる。また、こうした学者の人選について文化庁は「3人の先生はもともと(小委員会の上部組織である)文化審議会著作権分科会の委員。幅広い人選を心掛けているが、知財の分野は人材が少ないので特定の人に集中しやすい」(川瀬真・著作物流通推進室長)と説明する。

 ただこのような小委員会で学者は、メーカーや権利者など利益団体の代表と違い、「中立的な学識経験者」の立場だ。CRICと関係が深い2人は中立的発言が多く、基金との関係で偏った発言があったとまではいえない。だが、日本の審議会は常々、業界利益(文化庁の場合は権利者)を代表する中央官庁の事務局に都合のよい学者が選出されやすいと批判されてきた。著作権保護技術の革新を受けた補償金制度の見直し議論の場に、その補償金から間接的とはいえ金銭を得る学者が入っているのは、不適当と言わざるをえない。

 小委員会は現在、著作権保護技術を伴う有料ネット配信において補償金は不要との見解で合意しつつある。が、一方で音楽CDや地上波放送の複製が多く行われるiPodやパソコンが、補償金の徴収機器に指定されていないことを不服とする権利者団体の意向は極めて強い。業界ではiPodの指定だけで年35億円程度の増収と推定されている。

 また現在は政令指定で徴収先の機器や媒体を決めるが、迅速に指定できるように「公的な評価機関」の審議を経て文化庁長官が指定することへの制度変更も議論が進む。公的評価機関となれば再び登場するのは学識経験者。メーカー・消費者と権利者が存廃をめぐり真っ向から対立する補償金制度。それだけに学者の人選は一層の慎重さが求められる。
(週刊東洋経済:野村明弘)

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