丸ノ内線に「銀座線の電車」がときどき走る理由 普段は直通運転していない車両がなぜここに

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その後、南北線から有楽町線に乗り入れた車両は桜田門駅の池袋寄りから分岐する連絡線に入り、千代田線の霞ケ関駅へと向かう。この連絡線は弧を描くような形で、長さは約580m。地上でいえば、国会議事堂の正面にある和式庭園の下を横切る形だ。この庭園は両駅のある場所に比べて若干標高が高くなっている。その下を通っているのだ。

有楽町線と千代田線を結ぶ連絡線は国会議事堂の前庭地下を通る(筆者撮影)

国会議事堂付近は地図で見ると丸ノ内線が通っているが、そのほかにも地下鉄が通っていたなんて、と驚く人も多いのではないだろうか。

この有楽町線―千代田線間の連絡線は、以前は一般客が乗れる電車、しかも座席指定の特急が走っていた。小田急電鉄の特急ロマンスカー「ベイリゾート」だ。千代田線を経由して小田急線内と有楽町線の新木場を結ぶ臨時列車として2008年5月から土休日などに運転していたが、残念ながら2011年に運行を取りやめてしまった。

車両のサイズはまるで違うが…

都営地下鉄は浅草線、三田線、新宿線、大江戸線の4路線があるが、車両の大きさや線路幅などの規格がすべて一致する路線はない。では、どの路線間に連絡線があるかというと、浅草線と大江戸線だ。

大江戸線の重要部検査・法定検査は、光が丘―練馬間の開業当初は光が丘駅近くの地下にある高松車庫で行っていた。2000年には全線開業に合わせ、やはり地下式の木場車両検修場が完成し、当初はここで重要部検査などを行う計画もあった。しかし大がかりな工場設備を造るには建設費がかさむため、浅草線の馬込車両検修場を活用することになった。

浅草線の馬込車両検修場に並ぶ大江戸線車両(左)と、浅草線乗り入れ時に車両を牽引する電気機関車E5000形(撮影:尾形文繁)
汐留連絡線はビルの谷間の都道地下を通る(筆者撮影)

車両のサイズはまるで違うが、浅草線と大江戸線は線路の幅が1435mmで同じだ。ただ、大江戸線は鉄輪式リニアモーター駆動の地下鉄であり、一般的な走行方式の浅草線内は自走できない。そこで浅草線内は専用の電気機関車を造って牽引することになった。地下鉄用の機関車はこれが日本初だ。

両線を結ぶ連絡線は、大江戸線の汐留駅と浅草線の新橋―大門間を結んでおり「汐留連絡線」と呼ばれる。汐留駅ホームの清澄白河寄りに南側から寄り添ってくる線路があり、ここから浅草線新橋駅の南側へと約450mの線路がつながっている。

意外なところで見かける意外な車両は、このように路線図や地図には表れない線路を走ってやってくる。ふだんは見かけない別路線の車両が走っていたら、どこを通ってきたのか調べてみると、さまざまな発見があることだろう。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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