「感動で泣く」モンベル創業者の斬新キャンプ術 言葉も音楽もない「自然の音」を感じる

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難易度の高い山に挑戦しなくても、非日常の世界に飛び込まなくても、「日常」の中でも自然を享受できます。

私たちは、「自然の中」=「山(森)などの遠い場所の中」にあると考えがちです。しかし、自然は「どこにでも」あります。コンクリートジャングルの中でさえ、自然は存在しています。

以前、ビルの屋上でテント泊をしたことがありました。屋上には土も木もない。もちろん、ビルの屋上と山や森では、「自然」のレベルも違います。けれど、都会にも空があって、流れる雲もある。太陽の光を浴びることも、風の音を聞くことも、星空を眺めることもできます。

都会に自然がないのではなく、私たちが気づいていないだけなのかもしれません。自然を感じるセンサーを働かせてみる。目を凝らし、耳を澄ましてみる。すると、日常生活の中にも、自然とのつながりを見出すことができるはずです。

人間の体内には、心の虚しさを埋め、自分らしさを取り戻し、生きる力を育むための「体内スイッチ」が備わっているのではないでしょうか。自然を感じたとき、そのスイッチがオンになり、雑念がオフになり、心が解き放たれます。山に登らなくても、森に行かなくても、空を見上げ、流れる雲を目で追うだけで、自然と「体内スイッチ」をオンにできるのです。

キャンプに正解も不正解もない

キャンプの楽しみ方は、人それぞれです。「こうしなければいけない」という決まりはありません。

「キャンプには焚き火」「キャンプならバーベキュー」という思い込みは捨てて、好きに楽しめばいい。ポータブル電源を持ち込んでゲームやカラオケに興じるのも、タブレット端末で映画を観るのも自由です(ただしその行動が他人に影響を与えないこと、迷惑にならないことが基本です)。

「家でできることをキャンプ場でやって何の意味があるのか」といった意見もありますが、キャンプに正道も邪道も、正解も不正解もありません。私が提案することも、あくまで楽しみ方のひとつです。「自分のキャンプ」を楽しんでください。

今から20年以上前に、キャンプイベントに参加したことがありました。私が登山用のテントを地べたに張って、しゃがんで、小さなコッヘル(携帯用の調理器具)で食事をつくっていると、となりのグループはテーブルとイスとコンロを用意して、バーベキューを盛大に楽しんでいました。

その格差に少し圧倒されながら(笑)、内心、「あんなに豪勢に楽しむ人たちもいるのか!」と戸惑ったことを覚えています。面倒くさがりの私に、バーベキューセットを持ち込むという発想はなかったからです。

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