2030年代に「開業しそう」な首都圏新路線の現状 羽田アクセス線、大江戸線、多摩モノレール

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都営地下鉄大江戸線は、都庁前から都心を一周回って光が丘に至る路線だが、光が丘から先は大泉学園町(仮称)のほか、埼玉県のエリアに入って武蔵野線方面に延伸する計画もあり、武蔵野線が通る東所沢までの延伸が検討されている。

都営地下鉄大江戸線の延伸予定区間では一部の用地が既に確保され、土支田駅(仮称)の駅前ロータリー予定地には看板が立つ(2020年11月筆者撮影)

このうち、大泉学園町(仮称)まで延伸される可能性が高いが、延伸区間の沿線は住宅地で、西武池袋線と東武東上線の間にある鉄道の空白地帯を埋め、都心へのアクセスが大幅に改善されるものと期待されている。

「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」によると、大泉学園町(仮称)までの延伸では、延長4.0km、総事業費は900億円とされている。大泉学園(仮称)までは全区間が練馬区内を通り、途中に土支田(仮称)、大泉町(仮称)の2駅が設けられる。

大江戸線を延伸させる前提として、補助第230号線という道路の整備が先行しているが、2020年春の段階で補助第230号線の用地取得率が8割を超えていて、道路整備が終われば大江戸線の延伸に着手されると見て間違いない。既に光が丘方の土支田・高松地区では補助第230号線が供用され、土支田(仮称)の駅用地も確保されている。

地下鉄のために道路を整備するというのも不思議に思われるかもしれないが、地下鉄と言っても郊外の路線で、地下鉄を受け入れるまちづくりをしないと、鉄道を延伸しても効果がないということになる。

条件の厳しい大江戸線の埼玉県側

地下鉄の受け入れが着々と進む練馬区の区間とは対象的に、事業として採算に乗らない可能性が高いのが埼玉側の区間だ。大泉学園町(仮称)~東所沢間は延長8.1km、事業費約1400億円とされるが、少なくとも単独の事業では採算が取れないと試算されている。ルートも試算に用いたものが案としてあるだけで正式なものはなく、都市高速鉄道12号線延伸促進協議会による「都市高速鉄道 12 号線延伸に向けた基礎調査」では、沿線となる埼玉県所沢市の東所沢をはじめ、埼玉県新座市と東京都清瀬市の各市内で1駅ずつ設ける形で検討されている。

埼玉県の鉄道といえば、埼玉高速鉄道線の運賃が高額なことで知られているが、鉄道をはじめとする最近のインフラ(社会資本)は既設の街に割って入る形となることで整備費用が高額になる傾向にあり、苦労して開業しても運賃が高すぎて乗れないという結果になる。

大江戸線の延伸では、東所沢まで延伸すると、新宿からの所要時間は40分を超える見込みで、都心への速達効果も薄い。採算に乗せる検討もされているものの、いずれも効果が薄く、大泉学園町(仮称)まで延伸して終わってしまうのかもしれない。

羽田空港アクセス線、多摩モノレール箱根ヶ崎延伸、大江戸線大泉学園町延伸のうち、手続きがもっとも進捗しているのが羽田空港アクセス線の東山手ルートだ。これら3路線のなかでは最初に開業し、次いで多摩モノレール箱根ヶ崎、大江戸線大泉学園町の順に開業することになるだろう。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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