トワイライト廃止で気になるカシオペアの行方 北海道新幹線が招く、「寝台列車廃止」の必然

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北海道新幹線は、青函共用区間において在来線と同じ線路の上を走行することを想定している。東海道や山陽など現在の新幹線は、レールなどの保守作業を行う時間として深夜0時から 朝6時まで運行していないため、このルールを青函共用区間に当てはめると、寝台列車も0時から朝6時までは通過できないことになる。

北海道経済に貨物は必須

一方で、現在、深夜の時間帯にはJR貨物の貨物列車が青函共用区間を頻繁に走行している。北海道の農作物を消費地に運ぶためには、貨物列車の役割は不可欠なのだ。そのため、0~6時のうちの一部時間帯には貨物列車を通し、保守時間を4時間程度に圧縮する案が国土交通省で検討されている。

北海道経済を維持する上で、貨物列車の優先順位は高い。その上、青函共用区間の電圧は在来線基準の2万ボルトから新幹線基準の2万5000ボルトに昇圧する必要があり、機関車を新たに製造しなければならない。そのコストは1両あたり2億円以上になり、JR北海道にとって重い負担だ。島田修社長が「機関車を製造する予定はない」と発言した、との報道もあり、札幌行きの寝台列車が存続できないことはある意味で、必然だった。

懸念されるのはJR北海道の経営への影響。寝台列車は、同社の貴重な収入源である。「カシオペア」「北斗星」「トワイライトエクスプレス」が稼ぎ出す運賃や特急・寝台料金の合計は、もし、つねに満席だったとすれば、JR北海道の収入は年間27億円程度と試算される。急行「はまなす」は定員が「カシオペア」や「北斗星」よりも多いので、乗車率50%と仮定しても年間10億円の収入となる。

もちろん寝台列車にかかる経費や団体利用による割引などもあるが、鉄道事業の売上高が833億円のJR北海道にとって、寝台特急がもたらす収入は無視できない数字だった。それだけに、「寝台列車」がなくなることは、JR北海道の経営に大きな影響を与えることになるだろう。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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