列車の入線予定時刻は8時23分だが、そのおよそ5分後に「来た」というファンの声が次々と聞こえた。蒸気をもうもうと吐きながらSL鬼滅の刃が姿を現した。最後尾のディーゼル機関車が押す形で走行するので、SLの動力は必要ないはずだが、「動輪を回したり、汽笛を鳴らしたりするために多少の蒸気は使う」(JR九州)という。しかし、この蒸気の勢いは通常のSLと遜色ない。
出発予定時刻は8時35分。本来なら発車まで12分の余裕があるが、列車の入線が遅れたため5分強しかない。客車の近くでは駅員さんが「お乗りの方はいらっしゃいませんか」と大声で叫んでいる。2人組の客が「乗りまーす」と、人混みをかきわけながらやってきた。無事乗れたようだ。
結局列車は定刻どおりに発車。ホームからコンコースに向かうと、グッズ売り場が長蛇の列になっていた。
SL鬼滅の刃の次の停車駅は久留米駅で11時23分着。新幹線に乗って後を追った。SLはゆっくり走るので、新幹線による追っかけが可能だ。
コスプレで列車を見送る人も
久留米駅では約600人のファンが列車の到着を待ち構えていた。久留米では35分停車するので、写真を撮る時間の余裕はたっぷりある。
「無限」のプレートが付けられた車両前面にスマホやカメラを持った人たちが集中しているが、客車の出入り口の前で記念撮影をしている人もいる。近寄って見ると客車の号車番号を示すプレートに小さく「SL鬼滅の刃」と書いてあった。特別な列車であることを示す貴重なフォトスポットだ。
炭治郎と我妻善逸という主要キャラクター2人のコスプレをして、客車の前でポーズをとっている男性2人組がいた。この2人は熊本駅にもいた。話を聞いてみると、2人は鹿児島県在住。コスプレで列車を見送ることにして、熊本、久留米、そして博多と、やはり新幹線で追いかけるという。
客車内は特別な装飾は行わないと聞いていたが、善逸の羽織と同じ柄ののれんがかかっているのが外から見えた。車内には鬼滅の刃のグッズを飾ったり、コスプレを楽しんだりしている客もいる。「原作の舞台である大正時代を連想させる袴や着物、コスチュームをお召しでご乗車のお客様に記念品を進呈する」(JR九州)とのことで、ファンといっしょに列車を盛り上げたいというJR九州の意図が見て取れる。客車に乗っていた女性客も「停車駅でこれだけ祝福してもらえるなんて夢のようだ」と話していた。
大きな汽笛を鳴らして列車は定刻の11時58分に発車。次に停車する鳥栖駅は、新幹線の停車駅(新鳥栖)とは離れており、追っかけは断念して終着駅の博多に先回りした。
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