ニコ動生みの親「企業の一番重要な役割は雇用」 企業経営には「シンプルな成功哲学」が必要だ

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2017年、教育ITソリューションEXPOに登壇した川上量生。躍進する企業の経営者たちの多くは、私たちを唸らせるシンプルな「成功哲学」を持っている(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
「ワード・ポリティクス」という言葉がある。アメリカには「ワード・ポリティクス」に長けたリーダーが多い。たとえば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、2001年9月11日に「同時多発テロ」が起きたとき、「民主主義国家に対するテロリストたちとの戦争」だといい切り、国民を1つにした。アメリカ国民の心をつかんだバラク・オバマ大統領の「Yes, we can.」は記憶に新しい。日本でも「自民党をぶっ壊す」と叫んで高支持率を得た小泉純一郎首相には、天才的な「ワード・ポリティクス」のセンスがあった。
企業の経営にも「ワード・ポリティクス」が必要である。とくに時代の転換期や危機的な時期には、従業員や株主、そして社会を納得させ、共鳴させる決め手となる「言葉」が必要である。躍進する企業の経営者たちの多くは、私たちを唸らせる言葉、すなわちシンプルな「成功哲学」を持っている。
伝説の経営者100人の世界一短い成功哲学』ではそうした言葉が数多く紹介されている。本稿では、同書から一部抜粋してお届けする。

「ニコニコ動画」に明確な方針はない

企業の社会的役割で一番重要なのは雇用です。
だから、人数が多いのはいいこと
♯川上量生 (ドワンゴ会長)
川上量生(かわかみ・のぶお)
1968(昭和43)年、愛媛県に生まれる。1991(平成3)年、京都大学工学部卒業、ソフトウェアジャパン入社。同社の倒産後、1997(平成9)年、ドワンゴを設立する。2015(平成27)年、KADOKAWA・DWANGO社長に就任。現在、ドワンゴ顧問。

「あまり考えてませんね。明確な方針は出してないです」

ドワンゴ会長の川上量生から、いきなり意外な答えが返ってきた。ドワンゴといえば、「ニコニコ動画」という画期的なメディアをスタートさせた会社である。私は、当然ながら、ドワンゴが、そして「ニコニコ動画」が目指すものを聞いたのだった。

「僕の仕事のスタイルはサラリーマンです。サラリーマンは何かといったら、与えられた仕事をこなすことです。ドワンゴは着メロと『ニコ動』で大きくなった会社ですが、どちらも僕がやりたいからやったわけじゃない。このままだと会社が潰れるから、何か新しいことをやらなくちゃいけないと、必要に迫られてやっただけですよ、本当に」

川上は、つまり何か夢があるわけではなく、売れるサービスを作ろうとしただけだという。しかし、それでも川上は私たちが驚くようなものを世に出してくる。「ニコ動」については、「動画生放送で勝負しようと思って、その前にテストで動画サービスを作ったら、当たってしまった」そうだ。凡人としては、何やら悔しい気分になる。

私は、「ニコ動」は新しい時代のテレビ局を目指しているのかと思っていたのだが、川上はきっぱりと否定した。

「それは考えたことがないです。テレビ局や新聞社と同じことをするなら、別に要らないじゃないですか。ドワンゴはエンターテインメントの会社です。『ニコ動』で既存のメディアの人たちがやらないことを平然とやってみれば、面白いかな、と」

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