医療機関で「セキュリティ対策」が進まない背景

ワクチン情報狙うサイバー攻撃が日本でも発生

医療機関は、コロナ禍において、人々が特に必要とし、頼りにしている重要インフラの1つだ。その医療機関へのサイバー攻撃が世界的に増しており、救命活動にとって大いに脅威となっている。

サイバー攻撃には主に2つの種類があり、1つは、今回日本で報じられたようなサイバースパイ活動だ。景気の回復と世界での影響力の拡大において重要な鍵を握るワクチン研究開発の最新情報を医療機関から盗み取る。サイバー攻撃を行っているのは、国家を背景にしたハッカー集団だ。

業務に必要なデータが暗号化される

例えば、2020年7月16日、アメリカ政府、イギリス政府とカナダ政府は、ロシアのハッカー集団がこの3カ国の新型コロナウイルスのワクチン研究開発機関の情報を狙ったサイバー攻撃を仕掛けていると警告を発した。駐英ロシア大使はただちにイギリスBBCのテレビ番組に登場、ロシアの情報機関によるサイバー攻撃との見方は意味をなさないと反論した。

また、7月21日、30代の中国人ハッカー2人を新型コロナウイルス関連の研究データなどをサイバー攻撃で盗んだ容疑で起訴したとアメリカ司法省が発表している。司法省によると、2人は中国の情報機関の「国家安全部」と契約し、サイバー攻撃に必要な情報を受け取っていたという。中国政府は関与を否定している。

医療機関が受けているもう1つのサイバー攻撃は、金銭目的のサイバー犯罪者による身代金要求型ウイルスだ。感染すると、業務に必要不可欠なデータが暗号化されてしまい、ITシステムが使えなくなってしまう。攻撃者は、業務、病院の場合は患者の命を人質に取り、「暗号を解くための鍵が欲しければ、いつまでにこれだけの身代金を支払え」と要求するメッセージを残す。

アメリカのサイバーセキュリティ企業「バラクーダネットワークス」によると、2020年に入ってから世界で確認された身代金要求型ウイルスによる攻撃のうち、23%が医療機関に向けられていた。ちなみに2019年の割合は、21%だった。

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