待遇格差訴訟、最高裁判決が真逆に割れたワケ 各種手当は認めた一方、賞与・退職金は認めず

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判決後の会見で、複数の原告から指摘されたのが、判決で支給が認められた有給の病気休暇の必要性だ。同社では正社員は1年目から90日の有給の病気休暇が与えられる一方、契約社員は何年働いても10日、しかも無給の休暇制度しかなかった。

「私が今回の裁判の中で、最もこだわったのが有給の病気休暇だ」。東京訴訟の原告、宇田川朝史さん(55)は語る。2008年に契約社員となり千葉県内の郵便局でゆうパックの集配に従事してきた。

ある時、同僚の契約社員が脳梗塞で倒れ、リハビリも実らず職場を去ることを余儀なくされた。「まじめに一生懸命働く人で仕事ぶりは正社員にも見劣りしなかったが、手当もなく治療費も苦しかっただろう。小さな子どももいる中、さぞかし無念だったはずだ」と宇田川さんは振り返る。「この時、有給の病気休暇は労働者にとって絶対に必要だと痛感した。だから今回、原告として立ち上がった」。

「同じ日本郵便の非正規として働く妻が乳がんになったとき、病気休暇の重要性をひしひしと感じた」。大阪訴訟の原告の一人で勤続13年の竹内義博さん(58)は振り返る。「抗がん剤治療の副作用に苦しめられ、相当無理して出勤しては早退、欠勤の繰り返しだった。もともとあった年次有給休暇はあっという間に使い果たしてしまった。もし有給の病気休暇があったら、安心して治療に専念することができたのに」。

同一労働同一賃金が追い風

従来は労働契約法20条を根拠に非正社員が待遇改善を求めても、裁判所ではなかなか認められなかった。風向きが変わってきたのは、安倍晋三政権が掲げた「働き方改革」の柱の1つ、「同一労働同一賃金」制度の導入にある。今年4月から制度は開始されている。

これは同じ会社・団体における正社員と契約社員やパート、派遣などの非正社員の間で、基本給や賞与(ボーナス)、各種手当などの待遇について不合理な格差を禁ずるものだ。どのような格差が不合理となるのかについて、政府はガイドラインを策定しており、手当については時間外や深夜・休日労働は同じ割増率での支給を求め、通勤手当や精皆勤手当などについては格差を認めないとするなど、かなり具体的に基準を明示している。今回の最高裁の判断もその流れに沿っている。

最高裁判決を受け、日本郵便は制度変更を迫られることになる。従業員約38万人のほぼ半数の18万4000人が非正社員という、日本有数の大企業はどう動くのか。実は同社はすでに訴訟中から手当の見直しを進めている。

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