菅首相、「学術会議」任命拒否に込めた権謀術数 理由はあいまいな説明に終始、かみ合わぬ議論

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ただ、6人の任命拒否の具体的理由は「コメントを控える」とし、「同会議の総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断した」とあいまいな説明に終始した。併せて「学問の自由への侵害では」との記者団の問いには、「まったく関係がない。どう考えてもそうではない」と気色ばみ、6人が安保法制などに反対していたことについても「まったく関係ない」と否定した。

野党側は7、8日の衆参両院での内閣委員会の閉会中審査で「選に漏れた方たちの名誉にかかわる」などと追及。三ッ林裕巳内閣府副大臣は「業績にとらわれない広い視野に立って活動を進めていただく必要があるということ」と答弁したが、理由については「総合的、俯瞰的に判断」というセリフを繰り返すだけで、論議はまったくかみ合わなかった。

何も説明しない、何も答えない

野党側は、1983年の国会で政府が「(学術会議から)会員が推薦され、それをその通り内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うと解釈している」と答弁していることとの整合性を質したが、政府側は「必ず推薦の通りに任命しなければならないとまでは言及されていない。この解釈は一貫している」とかわした。

野党側は首相の任命権に関する法的根拠も違法だと主張したが、政府側は2018年11月に内閣府日本学術会議事務局が作成した内部文書を引き合いに出し、公務員の選定罷免権を規定する憲法15条を根拠にして「違法ではない」と反論した。

政府側の対応について、立憲民主の枝野幸男代表は「まったくのゼロ回答。何も説明しない、何も答えない、言い訳すらしないという姿勢には強い憤りを持つ」と猛反発。次期臨時国会での各党代表質問やそれに続く衆参両院での予算委員会などで菅首相を厳しく追及する方針を示した。

また、任命拒否された6人の学者もそれぞれの立場から、「とうとうここまで手を出してきたか」などと菅首相の対応を批判。これと並行して、ネット上では任命拒否撤回を求める署名活動に賛同する書き込みが殺到し、国会周辺では連日、抗議デモが続いている。

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