アマゾンが設置した「巨大ロッカー」の秘密 箱の中から現れてきたのは日産のSUV

拡大
縮小
米国のアマゾンでは自動車も購入できる

実はこれは、アマゾンと日産のコラボによるマーケティングキャンペーン。アマゾンロッカーとは、アマゾンが3年前からニューヨーク、シアトル、カリフォルニア州各地の大手小売店セブンイレブンやステープラーの店内や駐車場に、宅配ロッカーを設けているプログラムだ。

配達された品物を自宅で受け取りたくない場合、アマゾンロッカーを指定できる。ロッカーからの返品も可能だ。アマゾンロッカーのLCD液晶画面にコードを打ち込むと、荷物が受け取れる仕組み。アマゾンロッカーは、サンフランシスコ市内だけでも8カ所設置されている。

日産とのコラボ企画は、以前も行った実績がある。アマゾン経由で日産「ヴァーサノート(日本国内では「ノート」)を注文すると、3台に限り、アマゾンの巨大段ボール箱に入れて配達するというキャンペーンを、ウィスコンシン州の州都マジソンで行った。今回はキャンペーンの規模を大きくし、サンフランシスコの目抜き通り沿いに派手なジャイアント・ロッカーを置いた。

巨大ロッカーのうち、もっとも大きな部屋に入っていたのは、ファミリーに人気の高いSUV「ローグ」。つまり、抽選に当たれば自動車がもらえる、かなり大盤振る舞いのキャンペーンなのだ。

将来は無人機が自動車を運ぶ?

アマゾンと日産は、バッドカンパニー・フィルムズという映像制作会社とTBWAというロサンゼルスの広告代理店と組んで、このロッカー・イベントを行った。気になるのは、今回のキャンペーンでの懸賞総額。いったい、どのくらいなのだろうか。

TBWAのシャウン・ウィッグ氏は「公表できない」という。ただ、「宣伝効果は予想以上に大きく、米国内だけでなく、オーストラリアやドイツでも報道されており話題性があるイベントになった」(ウィッグ氏)と満足げだ。

サンフランシスコ湾のはしけに建設されているグーグルのミステリアスな建物、アマゾンの空飛ぶドローン(無人機)による配達構想――。人々の関心を集めるような、工夫を凝らした広告宣伝が、アメリカでは大きなトレンドになってきたようだ。午後6時には終わった1日だけのこのイベントは、これからサンフランシスコ以外でも行うのだろうか。ウィッグ氏は「ほかの街で行われるかどうかは未定。お楽しみに」と笑ってみせた。

イベントに集まった人からは、「アマゾンの技術陣は、ドローンを使って車を無人配達する構想を検討している」という、ユーモアあふれる話も聞かれた。それだけ、サプライズを楽しみにしている人が多いということだろう。

Ayako Jacobsson ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

アヤコ・ジェイコブソン / Ayako Jacobsson

山口県徳山市生まれ、広島市で育つ。東京都立大学(現首都大学東京)法学部卒業、英ケンブリッジ大学、コロラド大学ボルダー校で学ぶ。在学中、AP通信東京支局で編集アシスタント、卒業後はビジネステレビのディレクターとして「ウォール・ストリート・ジャーナルを読む」「製造物責任法」等を担当。その後、読売新聞英字新聞記者として、通信、テレビ、映画、ホテルなどの業界を取材した。ペルーのフジモリ元大統領へのインタビューも行った。1999年頃からシリコンバレーに拠点を置き、取材・執筆活動を行っている。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT