県とは対照的、静岡市は「JRリニア工事」許可へ 河川法管理権限を市に移せば問題は解決する

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トンネル本体とは無関係の「準備工事」については、県が自然環境保全条例を拡大解釈して認めなかったが、同条例も県から市へ移譲することに問題はない。むしろ市が運用したほうが南アルプスエコパーク保全をスムーズに推進できる。

県は市町への権限移譲を推進してきた。リニア工事に関する権限のうち、土壌汚染対策法、県立自然公園条例、森林法、県土採取等規制条例などすべて静岡市に移している。1級河川でもすでに市内5カ所で移譲されている。市が手を挙げれば、県は反対しないはずだ。大井川の権限移譲について、県幹部は「まったく問題ない。大賛成」と答えた。

静岡市をみくびっている?

静岡県には、全国20ある政令市のうち、唯一、人口70万人を切り、若い女性の流出が止まらない不振の静岡市だけでなく、スズキ、ヤマハに代表される地場工業集積を持つ元気な浜松市がある。遠州方言で積極的に挑戦してみようを意味する「やらまいか」精神が息づく浜松市に比べて、何でも「やめまいか」と消極的で逃げる静岡市役所の気質をよく知る県幹部は「まず、無理だろう」と鼻で笑っている。そう考えると、県幹部の「大賛成」という回答の真意は、静岡市が手を挙げることなどまずありえない、とみくびっているからかもしれない。

だが、静岡市も「やらまいか」に動き出している。

静岡市の田辺市長(筆者撮影)

田辺氏は2018年6月、「井川地区はほったらかしだ」という知事批判に発奮したのか、県や流域市町の頭越しに、金子慎JR東海社長とリニア建設と地域振興に関する基本合意書を結び、井川地区の住民たちが長年、熱望してきた市内を結ぶ県道トンネル4kmをJR東海の全額負担で新設することにこぎつけた。リニア工事には欠かせない約27kmの林道東俣線の通行許可などを認める代わりに、トンネル建設費用140億円の負担をJR東海にのませたのだ。

田辺氏は「当初、140億円のうち、100億円負担するよう求められた。最後はトップ会談で全額負担させた」と自らの政治力を誇示した。

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