県とは対照的、静岡市は「JRリニア工事」許可へ

河川法管理権限を市に移せば問題は解決する

知事の言う通り、葵区は南アルプスの3000m級の山々を含む広大な地域。リニア静岡工区のすべてが行政区域に当たり、河川法と自然環境保全条例を除き、井川地区をはじめとする南アルプス全体を守る役割すべてを静岡市が担う。

リニア路線図(編集部作成)

路線計画図を見てわかる通り、リニアのトンネルは静岡県に入ると、建設予定地の西俣川、大井川(分岐点から東俣川と呼ぶ)の2カ所(斜坑、導水路を含めると6カ所)を通過する。JRのリニア工事を妨げているのは、河川法に基づく河川占用の許可権限。1級河川の大井川168kmのうち、駿河湾から上流26kmを国、そこから源流部までの約142kmを県が管理している。リニアトンネル建設予定地の西俣川、東俣川は県管理であり、河川に工作物を新設する場合、JR東海は知事の許可を得なければならない。

ただ、河川は1級河川だけではない。西俣川支流の小西俣川、蛇抜沢、西小石沢のなどの普通河川も通過する。普通河川は県ではなく、静岡市が管理、市条例が適用されるから、こちらはすべて市長の許可が必要となる。

リニア工事で河川が枯れる影響をにらみ、絶滅危惧種のヤマトイワナ保全などを県生物多様性専門部会で議論しているが、ヤマトイワナが生息するのは、市管理の普通河川であり、モニターを河川内に設置するなどJR東海が対応策を講じる場合にも市の許可が必要となる。

市はトンネル工事の許可を出す方針

驚くことに、市は県と違い、JRとの協議をすでに終えて、河川占用の許可を出す方針であることがわかった。同じ河川にもかかわらず大きな違いである。考えてみれば、源流の水は普通河川から1級河川に流れ込むから、普通河川の管理が重要であることは言うまでもない。

静岡市が普通河川だけでなく、1級河川まで管理すればリニア「静岡問題」は一挙に解決の方向に進む。河川法では、政令指定市の長が1級河川を管理できるとしているから、静岡市の行政範囲である井川地区から源流部までなら法的にも問題はない。

また、河川法施行規則では、貴重な自然環境の保全を河川管理と一体化することを求めている。川勝氏が問題にする南アルプスエコパークは、その指定から保全計画策定などすべては静岡市が行っている。

次ページ県幹部は権限移譲に「大賛成」
鉄道最前線の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 子どもを本当に幸せにする「親の力」
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
消える仕事、残る仕事<br>1億人の「職業地図」

コロナ、AI、脱炭素――。私たちの雇用を取り巻く環境が激変しています。今後、どんな職業を選ぶかは死活問題に。2030年に向け「消える仕事」「残る仕事」36業種、「会社員の価値」がわかる9職種を掲載。本特集が職業を改めて考える機会になれば幸いです。

東洋経済education×ICT