運動嫌いな人に知ってほしい「習慣」にするコツ やせたり体型維持のために始めるのは間違い

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どういうエクササイズを選ぶかによって、チーム内に生まれる感情も異なります。「アドベンチャーレース」のようにチームで障害などを乗り越える研修は、困難な課題にともに立ち向かうという参加者間の感情を醸成し、連帯感を強める効果がある。

ちなみに、医療従事者に最も効果があるのはダンス。人の不幸や痛みに向き合うことも多いので、喜びという感情が必要だからです。医師や看護師向けにダンスの研修を行うと、仕事やお互いへのコミットメントが高まるのがわかる。

音楽好きは運動好きなのか

──音楽が運動にもたらす効果も語られています。音楽好きの人は、実は運動も好き、ということですか。

そう質問されるのは初めてだけれど……例えば、エモーショナル・ロックなど悲しみたいがために音楽を聞く人もいるので、すべての人がそうとは言えませんが、音楽はドラムにしても、歌にしても、ほかの楽器にしても体を動かす要素があることを考えると、その仮定は間違っていないと言えます。

『スタンフォード式人生を変える運動の科学』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

自分の好きな音楽を聞いたときについ体が動いてしまう、好きなアーティストが音楽に合わせて踊っているのを見て自分を重ね合わせる、踊るまでしなくてもウォーキングするときに音楽を聞いているという人は少なくないのでは。最近私が読んだ研究によると、好きな音楽に合わせて体を動かすと、その曲をより好きになる効果があるようです。

──うつ病や薬物依存など強いストレスを経験した人は、100キロメートル走、24時間走といったウルトラマラソンのような極度にきつい運動を好む傾向があるのですね。

正直、私自身エクストリームスポーツの激しさに気押され、本書のおいてこの章を書くのがいちばん大変でした。

1つわかったのは、耐久レースや極度に激しいスポーツは、ストレスやつらい経験と自分との関係性を変える役割を果たす可能性があるということ。この件を研究して、今ではスポーツにおける激しい動きは、体を動かすことによるすべてのメリットを増進させると信じるようになりました。極度のストレスや困難を経験した人の脳が、それに見合う水準の経験を感じるには激しさが必要なのです。

取材では、不可能だと思われることを成し遂げて人生の困難に対する見方が変わった、という話も多くの人から聞きました。ウルトラマラソンでは、慣れ親しんだ環境から自らを隔絶し、ひたすら不安と向き合わないといけない。参加者の中には、ウルトラマラソンの戦略を人生でも活用しているという人が多くいました。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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