テキサス新幹線、実現の鍵は「バイデン大統領」 列車通勤続け、あだ名は「アムトラック・ジョー」

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新幹線の安全性が正式に確認され、運行ルート周辺の環境影響評価も終われば、残るハードルは建設費など事業費の調達だ。

その総額は200億ドル(約2兆1000億円)と巨額に及ぶ。主として民間から資金を募る計画である。

日本の海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)は特別目的事業体(SPV)を通じてのTCの持ち株会社が発行する社債の引受額を最大3億ドル(約315億円)から3.275億ドル(約343億円)に引き上げると7月に発表したが、200億ドル全体から見れば微々たるものだ。

【2020年10月5日14時45分追記】初出時、JOINの社債引受額に誤りがありましたので、上記のように修正しました。

民間からどれだけの資金が集まるか。新型コロナウイルスが猛威を振るう中でアメリカにおける投資マインドの先行きは見通せない。

アメリカの投資家が懸念材料として挙げるのは、テキサスに先行して2015年に着工したカリフォルニア高速鉄道である。

カリフォルニア高速鉄道のイメージ(画像: California High Speed Rail Authority)

サンフランシスコとロサンゼルスを2時間40分で結ぶ計画だったが、当初330億ドル(約3兆4650億円)とされていた事業は773億ドル(約8兆1165億円)に膨らみ、開業時期も2029年から2033年に延期。このため2019年に当初計画を大幅に縮小し、マーセド―ベーカーズフィールド間だけで開業することになった。計画が撤廃されたわけではないが、西海岸の2大都市を鉄道で結ぶという当初案からは大幅に後退したことになる。

カギを握る大統領選の行方

テキサス高速鉄道は2021年に着工し、2026年に開業するという目標だ。建設費も工期も当初計画から膨らんだカリフォルニア高速鉄道の轍を踏むべきではないと投資家や金融機関が判断すれば、資金調達が思うように進まない可能性がある。

その意味で、テキサス高速鉄道の実現のカギを握るのは11月のアメリカ大統領選挙だ。再選を目指すドナルド・トランプ大統領と政権奪還を狙う民主党のジョー・バイデン前副大統領が競っている。

バイデン氏はクリーンエネルギーとインフラへの投資を通じて経済を成長させる政策を掲げている。政権発足後4年間で2兆ドル(約2100兆円)を投資し、インフラの刷新やクリーン技術などの開発支援を行うという。

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