新ジャンル増税、ビール各社が描く「皮算用」 消費者はビール、それともチューハイを選ぶ?

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チューハイの酒税は、従来の新ジャンルと同じ350ml当たり28円が2026年10月まで維持される。新ジャンルが値上げを迫られる中、「1缶100円以下でも買える数少ない酒類」(小売り関係者)として、存在感が一層増すと考えるのは自然なことだ。

ただ、缶チューハイの市場の伸びに期待する会社も浮かない顔をみせる。ある酒類メーカーがこぼすように、「缶チューハイは各社の低価格競争が激しく利益が少ない」からだ。そこで各社は目下、缶チューハイの利益率向上を目指している。

業界関係者が注目する好事例は、コカ・コーラボトラーズジャパンが販売しているレモンチューハイの『檸檬堂』。2019年から全国で販売している。2020年は年間500万ケースを販売目標にしていたが、1~6月だけで422万ケースを売った。

高価格なチューハイを狙う

「売れて当然と思うおいしさ」とビール大手が絶賛する味もそうだが、ポイントはその値段。コンビニでの販売価格をみると、サントリーの『-196℃ストロングゼロ』が155円(税込み)なのに対し、『檸檬堂』は165円(税込み)。20~30円と目される缶チューハイの利益を考えると、10円とはいえ両者の差は大きい。

キリンビールの布施孝之社長も、2020年7月の会見の場で『檸檬堂』を引き合いに出し、高付加価値・高収益の商品にチャレンジしたいと述べていた。そのキリンは9月に希望小売価格229円(税込み)の『ベジバル』というスムージー風のチューハイ、10月には『麹レモンサワー』を参考小売価格174円(同)で発売する。高価格のチューハイ商品として市場に浸透させたい考えだ。

「缶チューハイ市場は伸びているのに価格が下がっている。このような状況を反省し、価格を上げていく施策をやっていかなければならない」。キリンビール常務執行役員マーケティング部長の山形光晴氏は、新商品発表の場で決意を示した。

しかし、「缶チューハイは日常的に飲むものとして根付いており、安さで選ばれる」など、冷ややかな声が小売り関係者からは聞こえてくる。一度安値で定着した缶チューハイ市場を変えることは容易ではないはずだ。

新ジャンル増税で玉突き的に伸びるのはビールになるのか、それともチューハイか。いずれにせよ、メーカーは低価格品を望む消費者からの支持確保と採算向上という相反する難題に立ち向かわなければならない。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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