ネット炎上参加者「実は高年収」という仰天実態 「暇な若者」でも「低学歴ひきこもり」でもない

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しかも、この正義感から裁く快楽は、ネットは現実社会よりも強いものとなる。なぜならば、ネットには自分と同じようにその人・企業を「許せない」と思い、同じように正義感から攻撃を仕掛けている人が少なからず存在するためだ。仲間と共に悪に対して正義の裁きを下している図式になるわけである。

思い思いの正義感から寄ってたかってバッシングを加える――。これは私刑(リンチ)と変わらない。

満たされていない「極端な人」たち

先述の調査結果で判明した属性を聞くと、なぜそのような人が「極端な人」になるのか、と疑問に思う人もいるかもしれない。

しかし、そのような属性と、その人が満たされているかは実はそれほど関係がない。家庭内で不和を抱えているかもしれない。若いときは目標をもっていろいろ取り組んでいたが、今はただ日々の降ってくる業務に追われているだけかもしれない。

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実は、近年の研究では、年収や健康といった環境が幸福感に与える影響は限定的であることがわかっている。より重要なのは、自分で何かをなそうとするなどの自分を主体とした変化や、人間関係のようだ。特に重要なのは家族など親密な人たちとの関係であり、端的にいえば幸福には愛が必要なのである。

つまり、人間関係がうまくいっていなかったり、能動的に物事に取り組んでいなかったりする人は、たとえ外面上は人からうらやましがられるような立場でも、内面では満たされているとは言いがたい状態なのだ。

常磐道あおり運転事件で逮捕された容疑者からも、そのような傾向が見られる。当該事件の容疑者は会社経営者であり、親族が所有するマンションを受け継いで不動産の管理や賃貸業をしていた。さらに、高級外国車を乗り回し、インスタグラムには高級な飲食店の写真を載せ、ぜいたくな暮らしをしていたらしい。

その人が、あおり運転をした揚げ句、被害者男性に対して数発殴打を繰り返すような「極端な人」だったのである。

以前、私が企業のエグゼクティブ向けに講演をしたときに、その聴衆の1人から興味深い話を聞くことがあった。曰く、その人の知り合いの他社のエグゼクティブが、まさにネット炎上に積極的に参加しており、かつ、それを自慢げに「正してやった」と言ってくるらしい。

その理由についてその方は、「ある程度成功を収める一方で、定年も見えてくるなか、自分の限界が見えてきて不満を感じているのではないか」と考察していた。「極端な人」とは、一見すると幸せそうに見えても、実はまったく満たされていない人たちなのである。

山口 真一 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授

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やまぐち しんいち / Shinichi Yamaguchi

1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。2020年より現職。専門は計量経済学、ネットメディア論、情報経済論等。NHKや日本経済新聞などのメディアにも多数出演・掲載。主な著作に『ソーシャルメディア解体全書』(勁草書房)、『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)等がある。KDDI Foundation Award貢献賞等を受賞。他に、東京大学客員連携研究員、早稲田大学ビジネススクール兼任講師、シエンプレ株式会社顧問、株式会社エコノミクスデザインシニアエコノミスト、総務省・厚労省の有識者会議委員等を務める。

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