発達障害の上司に「疲弊する人」「しない人」の差 デリカシーがない、机が汚い相手ほど要注意

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私も、抽象的な話を理解するのが苦手です。勝手に変な方向に解釈して話を進めて「そうじゃないんだよ……」といわれたことは数知れず。

そこで、あいまいなことをいわれたら必ず「具体的にどういうことか」としつこく質問することにしています。結果としてお互いのコミュニケーションの行き違いを防ぐことができます。

工夫3:上司のために優先順位をつけてあげる
発達障害、特にADHDの多動傾向が強い方は、優先順位を決めるのも苦手です。目につくもの、耳に入るものすべてに衝動的に反応してしまうのです。

部下が「どの仕事から優先したほうがいいでしょうか?」と聞いても、何を先にすればいいのかがわからず、どう指示を出したらいいか密かに悩んでいるかもしれません。そこで「Aの案件は納期が早いのでAから着手して、終わり次第B、Cの順でどうでしょうか?」のようにまずは提案という形で投げかけてあげると、答えやすくなります。

勝手に優先順位をつけてしまうと波風が立つかもしれませんが、提案して承諾をもらうという形なら、上司の顔も立てることができます。

目指すは「みんなでサポートし合える環境」

「ここまでお膳立てしないといけないのか」と思うかもしれません。たしかに、このような上司を持つのは部下にとっては大変なことと思います。中にはそれが原因で会社を辞めてしまう人も多いでしょう。

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しかし、管理職に昇進するのは、それなりに評価をされてのこと。そして、上司と部下という関係をうまくいかせるために上司からだけではなく部下からも配慮するのは、現実的な対策だと感じています。周囲が、環境や接し方さえ工夫してあげれば解決できることも多いのです。

私自身も、積極的に障害をカミングアウトし「このような支援が必要です」と訴えかけることで、働きやすい環境を手に入れてきました。もちろん、一方的にすべてを求めるのではなく、無理ない程度に絞って配慮をしてもらっていますが、周囲の理解やサポートには本当に助けられています。

こうした周囲の人の得意・不得意をお互い認め、支え合っていく「ニューロダイバーシティ」の考え方が日本でも広まり、どんな人にとっても働きやすい社会が実現していくといいなと願っています。

小鳥遊 会社員

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たかなし / Takanashi

1976年生まれ。本名は髙梨健太郎。発達障害の1つADHD(注意欠如・多動症)と診断される。仕事の抜け漏れや要領の悪さから自分を責め、抑うつや適応障害から休職や退職をくり返す。その後、仕事の管理を自作Excelツールで工夫しADHDの特徴をカバーできるようになり、現在はネミー株式会社に勤務。

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