犯罪が起きやすい「週末の商業施設」に潜む闇 犯罪者の人物像についての誤った思い込み
福岡市の事件が起きたのは、いわゆるショッピングモールでした。一見、犯罪とは最も縁遠い場所のように思えますが、実は誰もが利用する商業施設で子どもが狙われるケースは少なくありません。
2014年に千葉県内で、男児が相次いで被害に遭う連続わいせつ事件が起きました。この事件の現場もショッピングモールのトイレでした。
「なぜ、そんな人の多い場所で……」と不思議に思う人もいるかもしれません。しかし、そこがまさに犯罪者の狙いなのです。
「人が多い場所」とは、誰がいても不思議ではない場所だと言えるでしょう。人が多ければ、そのぶん他者に対する注意も薄れます。したがって、犯罪者にとっては逆説的に「目立たない」場所になるのです。
目的を達成した犯罪者は、とくに怪しまれることなく、容易に人混みに紛れて逃走してしまうのです。
そうした意味で、商業施設の多目的トイレや非常階段、駐車場などは物理的・心理的な「死角」として、犯罪が起きやすいスポットになるのです。
とくにトイレは、事件現場になりやすい場所。個室の内部(ドアの陰)に不審者が潜んでいる可能性もあります。もし、子どもと買い物をしていて1人でトイレに行かせるような場合でも、外から定期的に声をかけ、大人の存在を知らせることで被害を未然に防ぐことができるでしょう。
無差別殺人を回避することはできるか
わいせつ事件であれば、子どもを1人にしないことで、ある程度危険を回避できるかもしれません。しかし、今回の福岡の事件のように、加害者が不特定多数の人間を無差別に襲う事件から身を守る方法はあるのでしょうか?
無差別殺人犯の多くは、独りよがりの傾向が強く、そのため自分が適応できない社会に深い憎悪を持っているという特徴があります。また、歪んだ自尊感情を持ち、自分が正当に評価されていないのは社会のせいだとして、強い反発心を抱いていることも特筆すべき特徴です。
彼らがどのようなきっかけで「暴発」するのか、事前に察知することはほぼ不可能でしょう。
しかし、対策がないわけではありません。たとえば、効果的なのは、商業施設内の監視カメラを、適切な場所に増設することです。
また、急に人に近づこうとする、同じ場所を何度も往復する……といった異常行動を検知するシステムを取り入れることも有効でしょう。実際、AIを使って、こうした不審行動を検知するシステムがすでに大手メーカーによって開発されています。
一方で、無差別殺人犯を生まない取り組みも欠かせません。彼らがまわりから孤立して、社会に対する憎悪を拡大させる前に、その社会との「接点」をつくることが重要なのです。