会社の人事管理は適正に機能しているか?
書評:『企業の人事力』(林 明文著)
降級評価された社員は納得できない
2:6:2の法則は一見もっともらしいのだが、著者は異を唱える。社員の本当の評価は、1:8:1の企業もあれば、3:6:1の企業もあるはず。ところが人事の評価表がS・A・B・C・Dの5段階評価になっており、Aがもっとも多く、CやDがないと4:6:0になってしまい補正の必要が出てくる。その補正のモデルとして2:6:2が使われるのだ。そしてA評価の社員を強制的にCやDにしなくてはならない。降級評価された社員は納得できないはずだ。
この問題の原因は「評価者が適正な評価を行わないこと」と、「経営者や人事がそれを許していること」にある。要するに人事が遅れているのだ。著者は「社員の評価は、能力にせよ業績にせよ、絶対的な尺度で測定すべき」と論じ、「相対評価か、絶対評価か」というありがちな議論を一刀両断している。
原文を引用しよう。「企業が求める能力や行動、職務、業績などの基準に対する絶対的な評価でなければ、”測定”としての機能は果たせないはずです。またそうでなければ、評価の結果を育成につなげることもできないでしょう」。絶対評価が評価の大原則である、という著者の主張は正論だ。
人事常識の盲点を突く指摘が本書の特徴だ。「自律型人材」はグッドイメージで語られることが多いが、その意味は「早期退職も視野に入れてよく考えてください」「察してください」という意味だと著者は書いている。
ワークライフバランスについては、過去のホワイトカラーよりも「働き方が甘くなった(過保護になった)」と書いている。著者の指摘は、人事施策を立案・実行する際の具体的な指針を提供している。
(撮影:尾形文繁)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら