定年退職後も「現役気取りする」元部長のヤバさ 「独りよがりの正義を曲げない」男たちの迷走

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ホテルで営業を担当している坂本潔さん(57歳・仮名)は、数年前、強烈な個性の顧客を持ったことがある。宴会や会議用に宴会場を定期的に利用してくれている会社の窓口となっていたのが、総務部長の梶光彦さん(59歳・仮名)だった。

誰も抵抗できないゴリ押しおじさん

180センチの長身、がっちり体型のコワモテで、課長以下、部下たちから恐れられていた。「はい、わかりました!」と、直立不動で答えている社員の姿を、坂本さんは何度も見ている。

「特にお酒を飲まれると豹変する方で、強い部長がより強くなってしまうんです。部下にも、招待客に対しても口うるさいので、ちょっと近寄りがたいような感じでした」

その会社では毎年、企業や協会などの協力団体を招いてパーティーを開いていたのだが、ホテル側では、そこで頭を悩ませていることがあった。パーティーに出した料理が残るようなことがあっても衛生面の問題があり、持ち帰りは遠慮してもらうというホテル側のルールがあるため、毎回断るのだが、「もったいないじゃないか。女子社員が持って帰りたいと言っているんだからいいじゃないか」と、梶部長がいつもゴリ押ししてくるのだ。

「あんまりうるさいので、前任者も黙認せざるを得なかったのですが、私が担当するようになったとき、上司から、『悪しき慣習はなるべくやめるようにしておきたいので、君からうまく言ってもらえないか』という話があったのです」

そこで坂本さんは話を持って行ったが、そう簡単にOKする部長ではない。結局、「じゃあ、今回だけ」ということで話は落ち着いた。梶部長の定年が近づいているため、今回が最後になるはずだったからだ。

梶部長の定年退職後は、課長が部長に昇格し、新部長の新たな仕切りでパーティーが行われることになった。事前の打ち合わせの際には、「食べ物の持ち帰りはもうやりません。部下たちにもしっかり言っておきましたから、これからはホテル側にもご迷惑をかけません」と約束してくれていた。

梶さんは定年後、協力団体の中にある某協会に再就職した。そのため、パーティーにも出席するのだが、招待客という立場に変わった。

次ページ事態は落ち着くかのように見えたが…
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