これに対し、共和党大会におけるトランプさんはやりたい放題。指名受諾演説は延々1時間以上に及び、ホワイトハウスの園庭に約2000人の観客を呼び(ほとんどマスクをしていない!)、何度も歓声を浴びながら自画自賛と民主党批判を展開した。しかも演説終了とともに、ワシントン・モニュメントを背景に盛大に花火を打ち上げ、ホワイトハウス3階バルコニーからはテノール歌手がオペラを歌った。まさに「グレーテスト・ショーマン」である。
こんな2人が直接対決するのだから、何が起こっても不思議はない。そうでなくても高齢を不安視されているバイデン候補、討論会の最中に「空白の45秒」みたいな事故が起きれば、支持を大きく損じることになりかねない。
トランプ大統領が抗議デモ拡大を「歓迎」しているワケ
第2の注目点は、全米各地で起きている”Black Lives Matter”(黒人の命をなめんなよ)の抗議デモがどこまで拡大するか。8月23日、今度はウィスコンシン州ケノーシャで、白人警官が無抵抗の黒人を後ろから銃撃する、という事件が起きてしまった。これに対する抗議活動が各地で頻発し、一部は過激化して破壊行為を伴っている。するとトランプ大統領が唱える”Law and Order”(法と秩序)が、説得力を持つようになってくる。
実を言うとトランプ氏は、事態がエスカレートすることを歓迎していて、むしろ抗議活動を挑発しようとしている節がある。トランプ陣営が照準を合わせているのは「郊外に住む女性たち」。彼らに対して、「民主党は危険な連中だ」と思わせたいのである。抗議デモはしばしば”Defund the Police”(警察を解体せよ)というスローガンを唱えるが、トランプ政権2期目の政策アジェンダ10項目の1つに”Defend our Police”(われらが警察を守る)を加えている。トランプ支持者はこういう点に敏感だ。
ちなみにアメリカの警察官は、州なり郡なりの地方職員である。西部劇に出てくる保安官が、地元で選ばれる有力者であったことを想起されたい。刑法も州によって違うし、法の執行は自治に委ねられている。ところが警察や司法制度の改革が、今や全国的な課題となっている。連邦政府はどのように関与すべきなのか。ここがこの問題の難しさである。
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