任天堂「あつ森」快進撃でもスイッチ不足の苦悩 品薄で増産対応だが、高値転売には対策できず

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新型コロナの影響でスイッチの部品調達が追いつかず、工場の生産が遅延。出荷も一時停止となった。あつ森人気のあまり、スイッチを高値で転売する業者が出現したことも品薄に拍車をかけた。

任天堂はスイッチ本体や周辺機器の製造を担う複数のメーカーに対し、4~6月期の増産を要請したが、さらに7~9月期も増産要請している。フル稼働に近い状態まで供給拡大に努めたことで、生産体制は整いつつある。

後を絶たない高額転売

問題は転売対策だ。今春、フリマアプリの「メルカリ」やアマゾンでは、転売目的で購入されたと見られる新品・未開封のスイッチが、定価3万2978円(税込み)の1.5~3倍の高値で売買されるケースが横行し、問題視された。高値転売の状態が続き、スイッチの供給不足がいつまでも改善されなければ、任天堂への信頼が損なわれるリスクもある。

8月下旬現在でも4万3000円前後で出品される事例が後を絶たない。任天堂公式ストアや家電量販店のECサイトでは現在も抽選販売を続けており、一時期よりは購入できる機会は増えたといえるが、店頭やサイトでいつでも購入できる状態には至っていない。

「生産から店頭に並ぶまでにタイムラグが生じることや、需要が高い状況が続いていることで、依然として品薄になっている地域もある」(任天堂)が、流通段階で在庫切れが続いているわけでもないようだ。消費者の手元には届いていない現状について、卸会社からは「店頭に並べてしまうと購入者が行列をなして“密”になってしまう。やむなく店頭販売を控え、順次抽選販売をしている状況」という声も聞こえてくる。

6月に開かれた株主総会では、株主からスイッチの転売対策について質問が飛び出した。任天堂の古川俊太郎社長は「現行法下で、転売行為自体は認められているため、社として取りうる対策は限定的だが、1人でも多くのお客様に届けたい。生産、出荷を確実に行っていくことが今できる最も重要なこと」と話すにとどめた。

数カ月後には年末商戦を迎える。十分な出荷数を確保できるよう、引き続き増産に努める姿勢は示したものの、転売に対する抜本的な対策はとれないようだ。

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