ベンツの3列シート小型SUV「GLB」は売れるか ミニバン的に使える「7人乗りSUV」の可能性

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GLBをSUVではなく、コンパクトなミニバンとして捉えれば、新たなニーズが考えられる。ちなみに、3列シートのGLEは車格が2まわり上で、価格は950万円以上。諸費用などを入れた乗り出し価格は1000万円を超え、さすがに高い。一方、GLBならば500万円台とGLEの半額程度だ。

「子供がいてミニバン的な利用がしたいが、GLEはさすがに高い。Vクラスでも700万円以上もする。でも、GLBなら手が届く」というニーズは、少なくても確実に存在するだろう。

そうとなれば「ミニバンが欲しい」というユーザーを逃がさないためにも、数多く売れずとも、GLBの存在価値はあるのではないだろうか。また、BMWなどのライバルブランドにこのクラスの7人乗りSUVがないことは、大きなアドバンテージになるはずだ。

「ミニバンの代わりにSUV」という流れはできるか?

ワンボックスの商用車をルーツとするミニバンは、たしかに室内空間が広くて便利だ。しかし、クルマの基本性能である「走る・曲がる・止まる」を考えると、ボディは重く剛性も低いため、SUVに劣る。それでも日本はミニバンの人気が高い。

軽自動車でも、スライドドアを持つ非常に背の高いスーパーハイトワゴンと呼ばれるミニバンのようなスタイルのクルマが一番の人気を誇っている。ミニバンは走行性能的に不利なのに、日本で人気が高い。なぜだろうか。

メルセデス・ベンツで唯一のミニバンとなる「Vクラス」(写真:ダイムラー)

その理由は、日本の走行スピードが低いからだろう。速度無制限のアウトバーンのあるドイツでは、比較的走行性能の高いクルマが選ばれる。街を走るミニバンスタイルのクルマの多くは、商用車だ。

アメリカは速度制限こそあるものの、高速道路の料金が無料で、誰もが高速道路を走る。その結果、子供を持つファミリーはミニバンではなくSUVを選ぶことが多いという。走行性能が重要なマーケットでは、乗用車としてのミニバンはあまり人気がないように見える。

ちなみに、インドネシアも日本と同様にミニバンの人気の高い国だ。しかし、インドネシアは世界屈指の渋滞のひどい国。つまり、走行速度が遅い。しかも、裕福な人は自分では運転せずに、ドライバーを雇うことも多いため、走行性能はあまり重視されないのだ。だからこそ、ミニバンの人気が高いのだろう。

しかし、どんな環境であろうともミニバンとSUVでは、そもそも走行性能面でSUVが有利だ。安全面を重視したいのであれば当然、走行性能に優れるほうがよい。大切な家族を運ぶのであるから、利便性だけでなく、走行面での安全性を重視する人が増えてほしいもの。ミニバンではなく3列SUVという選択肢が、もっとポピュラーになってもいいのではないか。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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