急増する「英語の発音だけいい人」が抱える難点

英語が苦手な人に「決定的に欠けている」感覚

この背景に2008年からの小学校での英語の導入、2020年からの教科化に代表されるような、英語の「音声教育」の強化があることは容易に推測できますし、言語学習者が音声を入り口として学習を始めることは、保育士としての感覚からも、非常に理にかなっていると考えています。

また、英語運用能力という観点から、多読やライティング、音声面に重点を置いて「初学者」以降の中学・高校英語教育が提供されることは、予備校講師の立場から言えば、現在の大学入試の方向性から離れたものだとは思いません。

ただ、こうした流れの中で、中学や高校のカリキュラムから明示的なかたちでの「文法」の学習は消え、リーディングやライティングに「溶け込む」ようになりました。その結果、従来よりも「理屈」や「理論」に抵抗感を持つ生徒や、その重要性を認識できない生徒は増加している、というのが現場で生徒に接する中での実感です。

「ロジックに長けた理系」ほど、英語でつまずく

この状況が生む問題は、例えば2つのかたちで顕在化します。1つは「文法」に対する苦手意識から、少しずつ「文法」が登場してくる中学英語以降、「英語が苦手」だと感じる生徒になること。もう1つは、本来「量」をこなすことで見えてくるべき、溶け込んでいるある種の「法則性」を意識することができないまま、積みあがることのない英語学習を繰り返してしまう生徒になることです。

前者は「英文の内容がなんとなくしか読めないために、読解の選択肢が正しく読めず、大学受験がうまくいかなかった浪人生」として私の前に登場し、後者は「あれだけやったはずの英語がまったくできず、TOEICなどのスコア取得に苦労する社会人」として私の前に現れます。

驚くのは、後者で挙げた社会人には理系の方が多いことです。あれほどに「理論」の扱いに長けた人たちが、長きにわたる学校での英語学習の中でロジックを見出すことができず、英語で大きくつまずいてしまうのです。

とはいえ、救いがないわけではありません。前述の浪人生も社会人も、英文法という「理論」をしっかりとインプットした瞬間に、劇的な成長をすることが多々あるのです。この理論の積みあがる前提こそが「品詞と文型」の理解です。もしこの理解が、英語学習の比較的初期の段階で緩やかにでも導入されていたら、彼らの未来は違ったものになっていたかもしれません。

私が大切にしている言葉に「人は“短縮”はできるが“省略”はできない」というものがあります。言語を正しく「運用」するには、その言語に対するある種の客観性、つまり「理屈」が欠かせません。これを「省略」してしまったことの「ツケ」を、学習者が払わなくて済むような学習ステップを用意する必要があると考えています。

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