産経・フジ「世論調査不正」が投げかけたもの

マスコミ電話世論調査は本当に信頼できるか

当然、いくつかの疑問がわいてくる。

かつて主流だった面接調査が電話調査にとって代わられた理由の1つが回答率の低下だった。筆者も経験がある1980年代の面接調査は、多くの学生アルバイトを雇い、市役所などに行って選挙人名簿を閲覧し、本社に指定された地域や性別などの条件を満たす有権者を無作為に抽出する作業から始めた。

当時は回答率80%が目標で、70%台を割るようなことがあると社内で問題になることもあった。調査結果の精度を高めるために回答率は最も重要視されていたが、回答率は年々、低下の一途をたどっていった。

新聞社によって異なる回答率

これに対し電話調査は、いくら回答を拒否されても次の回答者を見つけ、とにかく調査実施時間内にサンプル数が目標にたどり着けばいいようだ。従って、どのくらいの人に拒否されたかがわかる回答率は面接調査ほど重視されていない。

世論調査で最も重要なことは、回答者が母集団(マスコミの世論調査の場合の多くは全国の有権者)をきちんと代表しているか、母集団の縮図となっているかという点である。サンプル数がいくら多くても、特定の階層などに偏った調査結果を国民の声であるとは言えない。

電話調査における回答率の分母は、調査対象となった電話番号のうち個人の電話と判明した数字で、分子はその中の回答数になる。しかし、オペレーターに「この電話は個人のものか企業などのものか」と聞かれ、世論調査に答えたくない人はそれが個人の電話であっても「会社のものです」と答えるかもしれない。それは事実上の回答拒否であり、本来なら分母に含まれるべきだが、そうなってはいない。

さらに各社の調査結果を見ると、電話調査の回答率は新聞社などによって大きく異なっており、中には回答率を記していない記事もある。回答率はもはや眼中にないのかもしれない。

そして、一定の回答数に達するまで次々と新しい回答者に電話をするという手法にも問題があるように思える。このやり方だと積極的に応じる人の回答が必然的に多くなり、その結果、調査結果が偏る可能性がある。

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