BMWが「4シリーズ」のグリルを巨大化した事情 日欧では賛否両論でも世界的には歓迎か?

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一方、昨年2.0%増となったBMWブランドに限って見ると、8シリーズ、7シリーズ、X7からなるラグジュアリークラスの販売台数が、対前年比66.0%増という驚きの数字を出している。7シリーズとX7のキドニーグリルの拡大は成功だったと言えるのだ。

しかも、昔からBMWに親しんできたがゆえに、日本同様キドニーグリル拡大に賛否両論があると予想するヨーロッパでは、これから企業別平均燃費基準(CAFE)がさらに厳しくなっていく予定で、電動車両の比率を高めていく必要がある。ラグジュアリークラスとスポーツモデルは大型高性能エンジンを積む傾向にあり、燃費の面では不利なので、中国など他の市場の嗜好に合わせたという見方もできる。

端正なフォルムとの決別

フロントデザインに多くのスペースを割いてしまったが、新型4シリーズクーペのそれ以外の部分にも触れておこう。

ボディサイズは、現行型と比較すると全長は128mm伸びて4768mm、全幅は27mm広がって1852mm、全高は6mm増えて1383mmになっている。ホイールベースも41mm伸びて2851mmになった。

これまでのBMWのクーペとは異なるファストバックのようなリヤまわり(写真:BMW)

ボディサイドは8シリーズに似ており、ウエッジシェイプとリアフェンダーの張り出しを強調し、リアウインドーとトランクリッドの角度を近づけてファストバックに近づけたスタイリングとしている。サイドのラインが水平に近く、トランクがキャビンから独立した、3200CSクーペ由来の端正なフォルムとは決別した。

8シリーズやZ4では、ドアの前に「エアブリーザー」と呼ばれるスリットを設け、そこからせり上がるラインに接する面に複雑な変化をつけることで後輪駆動らしさを強調するというのが、一昨年の説明だった。しかし、新型4シリーズクーペにエアフリーザーはなく、キャラクターラインで表現しており、そこからほぼ水平に強いアクセントを伸ばす方向に変わっている。

リアについてはL字コンビランプ、リヤバンパー両端に垂直配置されたダクトなど、最近のBMWのフォーマットに沿っている。ナンバープレートは3シリーズ同様、ランプの間に置かれた。

インテリアの基本的なデザインは「3シリーズセダン」と同じ(写真:BMW)

インテリアはドアトリムが一新され、前席はスポーツシートが標準装備となり、後席は2人掛けになること以外は、インパネを含めて基本的に3シリーズセダンと共通となっている。

メカニズムについては、先に簡単に触れたように、現在のBMWの方向性に基づいている。こうして見てくると新型4シリーズクーペは、BMWブランドならではの世界観をより多くのユーザーにアピールすべく、大胆なエクステリアを採用してきたのではないだろうか。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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