ただし、昔のキドニーグリルはヘッドランプとの間が空いており、グリル自体の幅は狭かった。また、グリルの下端がバンパーの下まで伸びていたのは戦前の車種だけで、戦後は一貫してバンパーの上で完結していた。現行の横長グリルを縦に伸ばした新型4シリーズクーペのそれとは、顔に占めるグリルの比率は大きく異なる。
プレスリリースを読み進めていくと、「表情豊かなフロントビューによって独自のキャラクターを表現した」とある。さらに大型化の理由として、大量の冷却用空気が必要なパワフルなエンジンの存在を挙げている。縦方向のバーを入れた既存のキドニーグリルに対し、メッシュタイプを標準装備とした点も目立つ。
もっとも新型4シリーズクーペのメカニズムは、先代同様3シリーズセダンをベースとしており、2.0リッター直列4気筒のガソリン/ディーゼルと3.0リッター直列6気筒のガソリンが用意されるエンジンラインナップも、欧州仕様の3シリーズセダンと変わらない。
つまり、機能面よりもスポーツ性を高めた車種であることを強調し、明確な差別化を図ろうという考えが、大型グリルの採用に行き着いたと予想できる。フラッグシップである7シリーズやX7とは、拡大の理由が違うことになる。
「グリルの大型化」は市場が求めた?
筆者は2018年11月、まだ我が国で発売前だった現行型3シリーズのデザインについての記事を書いた際に、同じ説明会で紹介された4シリーズの格上となる「8シリーズ」とオープン2シーター「Z4」のデザインについても触れた。
どちらもキドニーグリル外側の尖ったポイントが下に移動し、ヘッドランプが斜め上に位置していることが共通しており、スポーツカーについては今後、この造形でいくというのが当時の説明だった。しかし、新型4シリーズクーペにはこの路線は受け継がれなかった。
なぜ、キドニーグリルを大きくしてきたのか。今後も成長が見込まれる中国などアジア市場で、「大きく見えるデザイン」が好まれることが大きく関係しているだろう。
昨年のBMWおよびミニの販売実績を見ると、中国では約72万台を売って前年比13.1%増となり、BMWグループが1994年に中国市場に参入して以来、最高の実績となった。それに対し、アメリカでは1.8%増となる約36万台と微増であり、ヨーロッパでは約108万台で1.5%減となっている。圧倒的な伸びを示している中国市場を重視したクルマ作りを行うのは、当然だろう。
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