紙処理に追われる経理がデジタル化できない訳 低い投資の優先順位、「紙決裁」への愛着も

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「企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進している経済産業省に署名や賛同企業の声を届け、請求書の電子化を定めるガイドラインをつくってもらうよう働きかける」(ロボットペイメント・フィナンシャルクラウド事業部の藤田豪人事業部長)。

さらに、賛同企業に対してロボットペイメントが無償で請求管理ロボの導入コンサルティングも行う。現職の経理担当者500人に行った経理プラス編集部のアンケートによれば、現在約34%の企業が請求書の電子化サービスを導入している。今回のプロジェクトでは、国内企業の請求書電子化サービスの導入率を5割以上まで引き上げることを目標とする。

改正電子帳簿保存法が後押し

このプロジェクトが始動したのは新型コロナ影響以外にも理由がある。それが、10月に控えている改正電子帳簿保存法の施行だ。

「経理の働き方はリーマンショックや東日本大震災を経ても変わらなかった。(コロナ禍で)改正法が施行される今回のタイミングを逃すと、この先も変わらないのではないかと危惧した」。ロボットペイメントの清久健也社長は7月のプロジェクト発足会見で経緯を話した。

プロジェクトの賛同企業とロボットペイメントの藤田豪人事業部長(右端、写真:ロボットペイメント)

電子帳簿保存法は帳簿書類を電子データとして保存することを認めた法律で、1998年に制定された。2020年税制改正では、経理などバックオフィス業務の効率化を図るため、電子的に受け取った請求書などをデータのまま保存しやすくなった。

ユーザー(受領者)が自由にデータを改変できないクラウド会計や経費精算サービスを活用していたり、請求書の発行者がタイムスタンプ(その時点で存在していたことを証明するもの)を付与していれば、受領者のタイムスタンプが不要になる。選択肢が拡大されることで、経理業務をペーパーレスで行いやすくなる。

つまり、改正電子帳簿保存法の要件を満たし、電子請求書のクラウドサービスを展開しているロボットペイメントなどのサービスを使えば、業務負荷やコスト削減も実現できることになる。

だが、日本CFO協会が2020年3~4月に実施したオンラインアンケート(回答者数577人)によれば、経理業務において必要な社内制度やシステムが未整備であることがテレワーク阻害の主要因として挙げられている。法律が整備されたとしても、それに呼応する形で企業が動かなければ何の意味もないわけだ。

テレワークを実現できないことについては、「仕方がない、経理だから」(前出の経理担当女性)という諦めの声も聞かれる。経理の仕事は、請求書の処理から入出金管理、経費精算、伝票作成、決算書作成まで、お金に関するものすべてが当てはまる。企業にとって不可欠の部署のはずなのに、なぜデジタル化の機運が低かったのか。

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