JAL年金問題の一部始終--OB団体陥落の舞台裏
たとえば、民主党が政権を獲得する前、JALの経営問題を国会で責め立てた際の元ネタは、政投銀の内部資料だったと言われている。
JAL経営陣にとって、経営状態を知り抜いた政投銀の年金減額提案を蹴る選択肢はない。西松遥社長は経済産業省に呼ばれ、年金カットを約束してきた。この段階で社内への具体的な説明は何一つなく、社員は新聞報道で西松社長の切ってきた年金半額カットという手形を知らされた。
タスクフォースも「現行法内の処理に限界」
JALは労組が職種別に8組織もあり、一部組合は最近までストライキを決行するなど労組の力が強いことで有名だ。そこに寝耳に水の年金減額が降ってくれば、猛反発が起きない方が不自然だ。
年金問題については、政府サイドも手を焼いていた。民主党が企業再生の専門家を集めた「JAL再生タスクフォース」の内部資料では、「年金処理の問題」との一章がある。副題は「現行法の枠の中では抜本かつ確実な処理には限界」だ。
そこでは、現行法制下で年金受給者の権利は厳格に保護され、JALのような代行返上を済ませた確定給付型企業年金基金は、基金そのものを解散しても実質的な年金減額はできないことを指摘している。
私的整理ではなく会社更生法、民事再生法のいずれを適用しても、利回り分まで含めて裁判所が労働債権として優先性を認める可能性が高いと予想し、受給者の同意による自主的な減額以外に選択肢がないと結論づけている。