鉄道「ワンマン運転」、車掌がいらない法的根拠 列車防護の技術向上で規定も変化してきた

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また、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準について」(2002年3月8日付国鉄技第157号)により省令の解釈基準が定められているが、列車防護に関して、同第164号でワンマン運転における列車防護につき次の内容が通達されている。

列車に乗務する係員に列車防護を行わせる場合であって、動力車を操縦する係員が単独で乗務(ワンマン運転)する列車については、次のとおりとすること。
① 旅客列車を運転する場合は、乗降時の旅客の安全及び異常時の旅客の避難誘導に支障を及ぼすことがないこと。
② 複線運転をする区間については、隣接線路の列車防護が速やかに行われるように措置されていること。この場合において、急曲線等の線路条件、踏切道における道路交通量等の危険要素を勘案して、必要と認められる箇所の線路間には、列車防護が自動的に行われる装置を設けること。
③ 実施に際しては、関係する係員に対して相当の期間にわたって必要な教育及び訓練を行うこと。
④ 実施に際しては、利用客に対して、相当な期間にわたって周知徹底を図ること。
⑤ 区間、列車及び運転取扱いを実施基準に規定すること。

非常時の列車安全を内外から担保する列車防護技術が向上し、ワンマン運転に対する技術上のハードルも以前に比べてはるかに低くなってきたことから、法令上もワンマン運転をかつての例外的な扱いではなく当然の選択肢として用意するようになったのであろう。運転士すらも乗車しない無人運転も実用化され、法令上も認められるようにもなっている(省令第58条)。

技術の進歩で車掌が不要に?

それまで車掌乗務が当然だった鉄道でワンマン運転が広がったのは、車内放送の自動化の普及、改札機の自動化やICカードの普及による車内精算需要の低下、防犯装置や情報通信技術の発達による車内秩序維持機能の集約化・合理化――が挙げられる。

また、ブレーキなどの車両制御技術の発達による列車防護係員の必要性低下や、ホームドアとカメラの普及による列車発着時の安全確認手段の変化により、これまでより少ない人数で安全かつ円滑な列車の運転を十分に行えるようになったからという理由もあるだろう。

人の目や手で担保される安全は人為的な過誤の可能性が常に付きまとう。また、鉄道事業は、労働集約型・装置型産業であり運営にあたっての固定費は大きくなりがちである一方、収入の柱である運賃は上限が定められる(鉄道事業法第16条)。鉄道経営に対する赤字填補などの公的支援が必ずしも十分でないなかでは、鉄道事業者が安定経営のために可能な限りの合理化を追求するのは当然である。

いまでは全国でワンマン運転が当たり前に行われており、今後は運転士さえいない無人運転も普及していくことになると思われる。しかし、無人運転が行われていた横浜シーサイドラインで2019年6月に逆走事故があったように、運転が自動化された場合でも100%安全が保てるということにはならない。なお一層人と機械とのベストミックスが求められる。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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